2014年5月11日日曜日

ある独白あるいは憂鬱な大型連休



なんで、こないなったんやろ。
アホなことしてしもたなあ・・・・



大阪の道頓堀のとある橋の上。
男がひとり佇む。
黒く深く沈む水面に写るネオンの数ほどのため息。


あれは10年ほど前やった。
ローン組んでやっとマイホームもったんや。
嫁はんに子供ら喜んだなあ。
あのときや、仲間がお祝い会をやってくれたんや。
○○○○万のローンやし、完済まで65歳までかかるんや。
頑張らなあかんぜえ・・て激励された。
帰り道や・・
別嬪さんにおうたんや。
アイコンタクトしてしもた。会釈しよった。
つい酔うた勢いで声かけてしもた。
生玉神社の近くのマンションに誘われたんや。
有頂天になってしもた。
ソファーに並んで座ってコーヒー飲んで・・・肩に腕回したときや

われ なんさらしとんや!

こわもての二人がはいってきよった。
どうみても筋もんや。


写真撮られて、名前も住所も会社もみんなばれてしもた。
なんぼかオトシマエつけんかえって脅された。
ローン組んだばっかりで貯金なんかないがな。
嫁はんにも言われへんし・・サラ金から借りてはろたんや。
一回で済まんかった。だんだんサラ金の借金増える一方や。
どうしようもないんで、電車のつり革広告みて、弁護士先生に相談したんや。
個人再生スキームの手続きとってくれた。
毎月5万3年間はろたらすむことになった。
けど、弁護士先生なあ、経済的利益の30%が報酬やってぬかしよんね
こっちの払いのほうが大変やがな・・
えげつない話や、サラ金の上前はねよるわ

しゃあないから、夜のバイト始めた。
デリヘルのドライバーや。辛気臭い仕事や。疲れるし・・・
とうとうあかんとおもて、両手ついて堪忍してくれって泣いて頼んだんや。
どもならんかったわ。
領収書の束一冊くれた。
聞いたことのない会社の領収書や、宛名は、うちの会社名やないか

知恵出して会社からひっぱらんかえ。
嫁はんや子供大事とちゃうんかあ

知恵絞って架空取引でっち上げた。
現金で立替払いしたことにして、恐る恐る領収書だしたら、なんともなかった。
あるときや・・いつものようにくすねた会社の金封筒に入れて
渡したんや。
ほたら・・数枚の万札くれたんや。
もうたらあかん、もうてしもたらホンマに使い込みや

嫁はんにスカートでもこうたらんかえ

この一言で心が折れてしもた。

翌月もおんなじやった。

たまには子供連れて家族で回転すしでもくうたらどないや

こころは折れてしもたまま・・もう戻らんかったわ。

こころが麻痺してしもた。
相手に渡すとき以外でも、架空取引でっちあげるようになってしもた。
心底、犯罪者になってしもたわ。

先月や。転勤になった。
もうあかんわ。担当が替わったらばれるわ。
どないしょう・・
あいつらから電話があった。
もうあかんいうたら、切りよった。それからは電話かかってけえへんわ


今日、部長に呼ばれた。
社長が話しあるから本社にこいっていうとんやて・・
きっと事情聴取や。
クビやろなあ・・・牢屋にもいかなあかんのやろか
全部カツアゲされたことにしたら、少しは許してもらえるやろか?
ほやけど、肩に手まわしただけで○千万や。
何回かラブホにいったことにしようかなあ・・・アホみたいや
信じてもらえるやろか
なんで「恐喝の被害届」ださへんのや・・ていうやろなあ。
そんなこと今更でけへんがな


誰か外部の人も同席するっていうとった。
誰やろ。弁護士やろか・・社長の知り合いやいうとった。
もしかして・・・
この前に商売でトラブルあったときの相談相手かなあ
吉本のお笑い芸人みたいな二人やったげど、凄腕やった
それから、ふたり別嬪さんもいたなあ。
あとで相手がいうとったらしい。
あれら可愛い顔しとるけど、鬼やてえ・・・
それに・・結構な年のおっさんが親分みたいやったみたいや。
あの年でiPadかかえて・・・あの四人組もビビりまくりや
なんか・・感じだけやけど・・あのかつあげの二人のほうがまだ・・優しそうや


そういえば、嫁さん言うとった
みなれん別嬪さんふたり、近所で見かけたって。
連休やのに、なんか調べとんや。
大型連休やないか・・普通やと旅行にでもいってんのとちゃうんか


使い込んだ金返したらなんとか牢屋にいかんですむやろか。
嫁はんの実家金持ちやからなんとかしてくれへんかなあ。
ほやけど、結婚するとき反対されたし、駆け落ちみたいやったからなあ
そやそや、嫁はんも連れて来い・・っていうとった。
美人局も使い込みもバレバレや。
泣くやろか?
怒るやろなあ。
子供つれて実家かえってしまうんやろか
家のローンものこっとるし。クビになったら毎月○○万もはらわれへん。
売ろうおもても、相場下がってるからどもならんなあ。


もうまともな会社は勤められんやろなあ
あのデりヘルのオーナーに職たのもか
結構、眼かけてもうてたしななあ
広告用につくったHPの評判がけっこうよかったんや
コンピュータはちょっと自信あるし・・あんときは客足がよかったなあ
そうや、風俗店の名義貸しに名前かさんかっていわれたなあ
やばそうやけど、この際や 背に腹はかえられんし
ほやけど、なんかあったら名義貸しでもオーナーがしょっぴかれんのや
怖いなあ・・・

いっそ、南港からとびこもか
犬鳴山の奥いって、ぶらさがってもええし・・・
最後の頼りは、生命保険だけやがな。
死んだら、ローンだけはなんとかなるけど・・
ほやけどなあ・・・・


なんで、こないなったんやろ。
アホなことしてしもたなあ・・・・
どないしょう・・


水面に写るネオンの数はもう数えるほどしか残っていない。


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この日記は、次回の本屋大賞受賞を目指す作品のスケルトンです。
些細なことが積み重なり、後戻りできない心理を描写した(つもりです・・・笑)
本内容はまったくの創作であり、
実在する人物あるいは事実に類似するようなものがあったとしても、
それはまったくの偶然の一致にすぎません・・・・って毎度の注釈ですなあ。




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