2014年10月13日月曜日
騙された・・!(中華飲酒詩選に寄せて)
アンソロジーは楽しい。
中国文学は、詩文に限る。
小説や稗史なんぞは、下の下。史書と韻文詩さえあればいい。
しかし、勉学や出世・蓄財のような現世利益系はややもすると薄汚い。
さらりと、酒を飲み、歌を歌い、陽気に一期を過ごすのがいい・・・
東洋文庫は、稀覯な名著の山ですが、とりわけこれは・・・(笑)
愁いは千万、山ほど積り
美酒はわずかに三百杯
愁いは多くして酒は少なく・・・
されども、酒を傾ければ愁いは来ない って、こういう人生っていいですねえ。
才能ある詩人は、とっととつまんない宮仕えなんかやめて、帰去来あるいは放浪なのです。
その嚆矢は、陶淵明
高校の頃だったか・・・陶淵明の有名な詩を黒板に書き、奮励努力を鼓舞する先生
悪気はなかったと思うし、良い先生だったと今でも感謝してはいますが・・・
盛年 重ねては来たらず
一日 再びは朝になりがたし
時に及んで まさに勉励すべし
歳月 人を待たず
今日という日はまたやってくることはない
寸暇を惜しんでこそ、お勉強をしなさい ・・・とまあこんな意味だし
陶淵明先生が言うくらいだから、まあ遊びたいのを我慢して(苦笑)
実のところ、この先生も誤解していた可能性が高い。
何事も「つまみ食い」はよくない。
部分引用は、誤読の元とは今更ではないか
頑固なまでに原典主義のくせに、実のところ「五言絶句」だと勘違いしていた。
今回改めて全文を引用すれば・・・
人生無根蔕 人生 根帯なく
飄如陌上塵 飄として陌上の塵の如し
分散逐風轉 分散し風を逐って転じ
此已非常身 此れすでに常の身に非ず
落地爲兄弟 地に落ちては兄弟と爲る
何必骨肉親 何ぞ必ずしも骨肉の親のみならんや
得歡當作樂 歓を得なばまさに樂しみをなすべし
斗酒聚比鄰 斗酒 比鄰を集めよ
盛年不重來 盛年 重ねては来たらず
一日難再晨 一日 再びは朝になりがたし
及時當勉勵 時に及んでまさに勉励すべし
歳月不待人 歳月 人を待たず
縦に読んでも横に読んでも、勉学努力して出世蓄財のすすめには読めない。
一度しかない人生を、酒を枕に楽しもう!としか解釈のしようがない
思えば、陶淵明の人生観からして、そんな俗物的な詩を書くはずがない(笑)
蝸牛庵の人生も黄昏時
ろうそくは燃え尽きるときに一番輝くというではないか
明日に「道」を聞いては、昨夜に死すとも可なり
なんだか楽しくなった。
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