2014年11月1日土曜日
檜舞台を踏む・・・(再掲)
晴れの「檜舞台」っていう以上、和事の会場は「檜」で作られる。
和建築にとっての最高の木材ということらしいが、日本と台湾のみに生息する。
木目が通り、斧と楔できれいに割れ、また節もすくなく、素材として清冽である。
和建築の寿命は、材木の寿命に従うわけで、ローンが終わった頃に
朽ち果ててよければ、安材木で結構だが、
薬師寺の西塔のように、東塔と並び立つようなしつらえともなれば樹齢は最低でも千年。
ちなみに、西塔は東塔よりも一尺高く作られているとのこと
あと千年程度の風雪に耐えれば、西塔は自重で沈み東塔と同じに高さになるそうな(凄)
さて、世界遺産たる「能」の舞台も「檜」に決まっている。
檜ならなんでもいいってわけではなく、概ね百石(18立米)
分かりやすく言えば、丸太で14本程度。
それも、舞台板の継ぎ足しなんて言語道断ですから、
まあ直径で1米弱、長さで8米は必要とされます。
同様に舞台板は生きてますから、夏は膨張し、冬は収縮する。
その微妙な板の調整なんかも、見えないところで行ってます。
メインの舞台部分は三間四方。
そして、正面奥に後見座、舞台右手に地謡座、舞台の左方向に橋掛かりという
付属の場所がつき、後見座の奥の壁が老松を描いた「鏡板」
老松は神が降臨する場所とされます。
橋掛かりも演技の場所の一部であり、後世の歌舞伎の花道であるが、
この世とあの世の渡し場所のようなちょっと不気味な場所でもある。
まっとうな檜は、入手困難で、最近は台湾檜が幅を利かせているようであるが、
やはり、木曽の国有林を探すのが一番。
踏んだ感触、座った感じ・・・柔らかさが違うのです。
そして、単に伐採すればいいってもんではない。
伐採材を3年間、水没させ「もち」をよくする。
その後、製材加工を行うが、今度は、7年間のかげ干し乾燥で完全に水を抜く。
つまり、能舞台の造築とは十年懸りの大事業なのです。
片山幽雪師匠によれば・・・
京都の観世会館の舞台の張替えも、その程度の期間を要したらしい。
その後、初舞台の門出を祝い、若手能楽師が総出でお酒で舞台を拭いたそうな・・・
なんと、完全に乾いた舞台板は、ヤマタノオロチか大高源吾かってくらいに
アルコールを吸い尽くし、なんとその量一斗五升!!
もういっちょ。
能楽堂の建て替えでも、舞台板は生きている限り再利用する。
大阪の大槻能楽堂の建て替えの際には、とある建築業者に保管委託したのだが、倒産夜逃げのハプニング。
債権者はこれ幸いと「舞台板」を差し押さえ・・・
蝸牛庵の、若かりし頃の元師匠たちは、ダンビラ引っさげて回収に走り回ったそうな(笑)
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今月11月16日は、蝸牛庵の素謡のおさらい会です。満を持しての登場!
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