2015年1月24日土曜日
鉢の木・・・・再考
公式DVDを眺めております。
何度見てもどう贔屓目に見ても下手ですねえ・・・(苦笑)
本当にプロとアマの間には越えがたい溝がある。
演目への理解と講釈というか薀蓄には負けないが、そんなことは負け惜しみ。
上野の国の佐野のあたりに逼塞する鎌倉御家人の苦難と復権の物語
地名の連想からか
駒とめて 袖打ち払う かげもなし・・・
なんて定家の名吟が登場する。
万葉集に収録される本歌では、降るのは雪ではなく雨。
場所も大和路。
万葉集の収録歌を下敷きにしていると解説には必ず書いていますが、
実のところは源氏の「東屋」にも引用されているので定家は孫引きを行ったのではないか
と思われます。
薫大将が宇治辺りまで浮舟を拐かしにやってきた9月中旬の頃にも雨が降っていた。
晩秋の季節ですから、雨から雪に移し替えるのは奇矯なことでもない。
和歌集に収録された歌は、配列の流れの中で鑑賞するのが王道ですので
元歌のように、旅の途中の気象変化へのたじろぎだと思うのは正鵠を得ていない。
薫のように色恋沙汰が背景にあるはずだ。
定家の歌は新古今(第六巻冬歌)に収録されていますが、
だんだん雪深くなる風景の中で、雪をおしてオンナに会いにゆくモチーフも
描かれる。
王朝文学の広がりというのはそういうもので・・・
万葉集 源 氏 定 家 鉢の木
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無 季 秋 冬 冬
大 和 宇 治 大 和 上 野
雨 雨 雪 雪
旅 密 会 密 会 旅
この定家の歌は本歌取りのお手本とまで言われる名歌だそうですが、
どっこい、この謡曲の作者もそれなりに手のこんだことをやってます。
しかし、このような技法はある意味で「仲間内の楽屋オチ」めいたものがあり、
マフィア社会的な産物でしかないと思われるのが昨今。
蝸牛庵的には「知の劣化」なんですが・・・まあサイレント・マイノリティ(苦笑)
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