2015年8月27日木曜日
皇帝のいる八月
相変わらずの満員御礼は慶賀のいたりであるが、
日本が遭遇した「一番長い1日」の描き方としては、洒落に乏しい作品。
かつての東宝版は、当時の映画演劇界の厚みに保たれて、原作を素直に映像化した。
時代が変わり、そんな贅沢が望めない以上、もう少し創造的に・・・あるいは想像的に映像化すべきでしたよ。
今回の監督の意図はそういうことか!って、早合点したのは、プロ映画鑑賞家くらいかも。
英語タイトルが・・・和訳すれば「八月の皇帝」
プロ向きのひっかけ問題だとすれば、実にあざとい(笑)
小林久三原作の78年の日本映画・・・「皇帝のいない八月」
言葉の意図は不明というのが公式表明らしいのですが、政権与党の右派勢力を黒幕とする自衛隊のクーデター計画を背景とします。
あの「一番長い1日」だって、聖断に至る政治的葛藤もあるが、そんなことは前日以前に終わっている。
十日の御前会議でポツダム宣言の受諾は聖断で決まった。
あとは、内容の重要部分の確認に若干の時間を要した。
天皇大権がどうなるという極めて重要ではあるが、だからと言って大勢が変わるものでもなく、
十四日の最後の御前会議は、聖断の再確認である。
お昼頃に終わったようですが、かの玉音放送の収録は翌日までずれこんだ。
詔勅のこまかい字句をめぐっての論争であるが・・・まあ、歴史の残る重要な文書なので、一言一句疎かにしてはいけない。
が、時間が許さず、部分的に残念な内容になっている。
別に天皇の肉声だから特別な法的効能があるわけではないが、心理的効果は絶大であり、玉砕戦継続を叫ぶ狂信的青年将校にとっては、放送阻止を含む戒厳令断行等の「クーデター計画」は行動の必然である・・・がまあ、学歴エリートの計画立案能力の稚拙さ。
あれじゃ、物動の差以前に負けるわねえ。
調べても計画策定過程でのドラマに乏しく、絵にならなく断念・・・ということかもしれないが、
今回の映像化だって、誰もがそれなりに知っている出来事よりも、
想像を逞しくした「皇帝のいる八月のクーデター計画」失敗譚に仕立てればよかったんですがねえ。
そういうつもりの英語版タイトルだと思ったが・・・・知が働き過ぎた。
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