2016年8月5日金曜日
抑止力としての「没収あるいは追徴」
しばらく前に、デンマークで画期的な処罰体系導入により交通事故が半減した!ってニュースを絶賛するNET記事が相次いだのですが・・・
ちょっとよく考えてみましょう。
刑法19条等には「没収あるいはそれにかわる追徴」の定めがあります。
刑法違反(特別刑法を含みます)が確定すれば、付加刑として以下のものを国庫に納付させることが出来ます。
特別刑法とは、刑法典以外に罪と罰を定める法律ですから、道交法も含まれます。
没収の対象になる物を列挙しますと・・・
犯罪行為組成物(猥褻文書頒布罪における猥褻文書など)
犯罪行為共用物(殺人罪に用いた日本刀など)
犯罪行為生成物(通貨偽造罪によって偽造通貨など)
犯罪行為収得物(賭博罪によって得た金品など)
犯罪行為対価物(ゴルゴ13の収入など)
とかなんとか・・・解釈が微妙な部分もあり「強姦の模様を撮影したビデオ原本」を没収できるかっていわれますとねえ・・・
単純には強姦罪の付加刑を問うのは難しそうですが、判例では没収しています(被害者感情を忖度した無理筋って気もします)
ところが没収は原則「任意的没収」なのです。
つまり、必ず没収するものではなく裁判官の裁量であり、裁量の基準は「過去の判例の積み重ね」ということなんでしょう。
どうもデンマークでは「交通違反を行えば、必要的没収、つまり必ずその自動車を没収」してしまうようにした・・・らしい。
かなり大胆な話で、実のところかなり疑わしい(正確な情報ではない)と思っています。
法律に書けば何でも通るってものじゃない。
不当な量刑はそれ自体憲法違反となります(実は尊属殺人罪違憲判決の論理はそういうことで法の下の平等なんて綺麗ごとじゃない)
道交法違反で罰金刑や軽微な懲役刑を科せられた場合にも、数千万円のスーパーカーを没収していいかといわれると・・・・・
裁量のレベルがよくわからないのですが、過去は結構没収の適否をめぐっての判決があります。
したがって、デンマークでやっている程度らしきのことは日本でも実施すみというのが正しい理解だと思います。
厳罰化の流れというのは変わらない(今までが寛容すぎただけ)が、それだけで犯罪認知件数が減るものではない。
単に刑罰を重くするだけではなく、別の手立ても考えないとだめな時代だと思います。
それは、刑法の基本原則をどの程度見直すかということ
実行行為を処罰する(国際的にはコンスピラシー=共謀にさかのぼり処罰する流れですが、倭国では反対が多い)
責任能力を問う(心神喪失なんかだと処罰されないということが国民感情に合致するのか)
構成要件の厳格性(機械を騙して金員を詐取しても詐欺罪ではなかった・・・今もそうですので新しい犯罪類型を作った)
まあ、いろいろありますが、二番目が一番重大かな?
だって、重大犯罪を犯すこと、それ自体が異常な行為ですから「ジュッパひとからげ」に、精神状態が異常だったのでって言われちゃうとねえ
ここで、毎度の「加害者のジンケン」って言い立てますが、であれば「被害者や被害者家族の人権」はどうしてくれるんだい?
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