司馬遼太郎の「街道をゆく」は、結構面白い手軽な読み物だ。
しかし、この場合は「街道」自体が主役ではなく、その街道を行く(往還)する人物や物資にライトがあたるのだが、、、
木枯し紋次郎
原作は笹沢左保氏
ほぼ全作品が中編であり、時代は天保期の関八州の裏寂れた街道筋。花のお江戸なんかはまったく登場しないし、飢饉凶作の時代だから荒み切った風景ばかり。
70年代から80年代に結構な数の作品が上梓され、テレビドラマにもなり、好評を好評を博した。
荒み切った風景の中に同化した孤独で虚無な無宿渡世人がひとり。
中村敦夫さん主演のテレビドラマはそこそこ観た記憶がある。菅原文太さんの映画版の記憶はない。
しかし、原作を読んでなかったもんで、公設貸本屋さんの開架棚に選集があったから、読んでみた、、、
最初に舞台となる辺りの地図が載っている
有名どころな大街道の裏道ばかりで、聞いた事のないさびれた宿場や荒れた農村、、、とかなんとかのガイドブックが毎度のイントロ
その風景に点描されるのが、上州新田郷三日月村(いまの太田市界隈)生まれの紋次郎なんだが、紋次郎と言う人物よりも風景に感情移入をしてしまう。
知らなかったが、、、、、彼のトレードマークの五寸ばかりの手製の楊枝は当時では当たり前の長さだったらしい(テレビでは見栄えもあり、更に倍ほどの長さ)
姉の機転で間引きを逃れたという暗い過去。
自分を間引こうとした家族なんかと仲良くは出来ないし、姉が嫁いで家を出た頃に紋次郎も出奔。その後は故郷とは無縁の渡世人
とあることで、三宅島送りになるが島抜けをし、その後十数年の無宿人。しかし、その世界では結構な有名人
なんてことは、原作を読んで初めて知ったし、ストーリーの多くはミステリー仕立てだし、紋次郎の快刀乱麻を断つ推理で一件落着。
無論、正統とはほど遠いヤクザ剣法も見せ場。
この作品群で、作者は日本ミステリー文学大賞にも輝いたのですから、単なる股旅ものではない。
これからは、名探偵の名前を問われたら「木枯し紋次郎」とすました顔で(^^)
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