2025年9月26日金曜日

断腸亭日乗(4)

 




昭和八年から十年の頃、荷風は還暦には至らないが、五十路半ば
元来消化器系の持病を抱え、医者通いと投薬が欠かせないくせに、夜な夜な銀座界隈に出没し、馴染みのレストランやカフェ、、、さらには待合に足を運び私娼との交情もなかなか盛んであり、、、、


この日乗(日記)は岩波文庫抄録版は過去に刊行され、今更完本なんかって思っていたが、抄録版に掲載できなかった箇所と思しき部分こそが面白い。

伝荷風作「四畳半襖の下張」が荷風の真作かどうか議論のあるところだが、日乗の書きっぷりからすれば、公表版と同時に裏版を密かに書いた可能性が極めて高いような印象をもった



この時代は文芸復権期と言われ、芥川賞や直木賞が始まった時期でもあるが、講談社や文藝春秋社、とりわけ菊池寛と犬猿の仲でもあり文壇には背を向け、小品雑文を書き、旧作の再刊なんかで高等遊民らしく遊び歩くに苦労はなかった程度の稼ぎはあったようだ。



世情騒然とはしているが、紅旗征戎にさほどの興味を示さず、下衆な醜聞ネタ拾いに終始するところが荷風らしい。

しかし、彼の行動範囲は麻布の自宅界隈から銀座新橋、多少足を伸ばして浅草や隅田川を越えたあたりの一部。

玉の井なんかが度々登場するのは、次巻だろう。

つまり、佳境にはいるのだ!

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