この街を訪れたのは、89年の秋の頃。
曖昧ですが、北駅から、列車に乗ったんだと思う。
手違いでしょうか、コンパートメントがオーバーブッキングなので、やむなく二等車、
エリック・ロメールに登場しそうなおしゃべりな二人の女の子の戯言を片耳に、一路目的地へ。
当時は7ー11で働くジャパニーズビジネスマンですから、
連日連夜3つの会合に出席しこなす・・・という名目で、
とある忘れられた商業都市を訪れることにした。
いまでこそ、世界遺産で有名になりましたが、
まだ、極東の果てではそう認知度は高くなかったように思えます。
明るい秋の陽射しは、柔らかく、暖かく、でも暑くも寒くもなく・・・
運河巡りで、最高にノホホンと気分が良く、
かさばらない事が取り柄ですねえ・・・
なんて言いながら、レース製品を買いあさり・・・
でも、そんな事が目的ではないのでした。
廃墟美という一種マニア系な美意識があります。
中世から近代にかけて発展した商業都市が、衰退し、あまつさえ
ローゼンバッハに「死都」とまで形容され、
その生気を失った都市の廃墟美を愛でに来たのですが・・・当て外れ(笑)
ビスコンティのベニスのつもりが、ヘップバーンの旅情に化けたようなものです。
本屋のバイト店員風の惹句を言えば・・・
沈黙と憂愁にとざされ,教会の鐘の音が悲しみの霧となって
降りそそぐ灰色の都ブリュージュ。
愛する妻をうしなって悲嘆に沈むユーグ・ヴィアーヌがそこで出会ったのは
亡き妻に瓜二つの女ジャーヌだった。
世紀末のほの暗い夢のうちに生きたベルギー人ローデンバックが、
限りない哀惜をこめて描く黄昏の世界・・・なんちゃって(笑)
こんな風な誘惑を受ければ、行きたくもなるでしょう・・・
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