2016年7月16日土曜日
実は初めて読むのです!
今話題・・・でもなかろうが、皇室典範なるものを精読してみよう。
でも、旧法の方ですよ。
でも、法律かと言われれば、ちょっと違う特別な存在であり、国法としての憲法、家法である皇室典範が
ツインとなっていた。
公布のタイミングも同じです。
それ以前は.........?
慣例の世界で成文法は無かった。
皇位継承の争いごとは、皇位に値打ちがあるから起きるのであり、室町中期以降は権威も失落し、平穏無事(笑)
カッコ書きが勝手なつぶやきですので、読み飛ばしていただいても結構です。
皇室典範
第一章 皇位継承
第一条 大日本国皇位ハ祖宗ノ皇統ニシテ男系ノ男子之ヲ継承ス
(男系天皇原則はいまと同じです)
第二条 皇位ハ皇長子ニ伝フ
第三条 皇長子在ラサルトキハ皇長孫ニ伝フ皇長子及其ノ子孫皆在ラサルトキハ皇次子及其ノ子孫ニ
伝フ以下皆之ニ例ス
第四条 皇子孫ノ皇位ヲ繼承スルハ嫡出ヲ先ニス皇庶子孫ノ皇位ヲ継承スルハ皇嫡子孫皆在ラサルトキ
ニ限ル
第五条 皇子孫皆在ラサルトキハ皇兄弟及其ノ子孫ニ伝フ
第六条 皇兄弟及其ノ子孫皆在ラサルトキハ皇伯叔父及其ノ子孫ニ傳フ
第七条 皇伯叔父及其ノ子孫皆在ラサルトキハ其ノ以上ニ於テ最近親ノ皇族ニ伝フ
第八条 皇兄弟以上ハ同等内ニ於テ嫡ヲ先ニシ庶ヲ後ニシ長ヲ先ニシ幼ヲ後ニス
(以上の条文も意味が同じのようですが、先嫡後庶はさすがに削除。万一隠し子がおられれば...?)
第九条 皇嗣精神若ハ身体ノ不治ノ重患アリ又ハ重大ノ事故アルトキハ皇族会議及枢密顧問ニ諮詢シ前
数条ニ依り継承ノ順序ヲ換フルコトヲ得
(この条項も変わりません)
第二章 踐祚即位
第一〇条 天皇崩スルトキハ皇嗣即チ踐祚シ祖宗ノ神器ヲ承ク
第一一条 即位ノ礼及大嘗祭ハ京都ニ於テ之ヲ行フ
第一二条 踐祚ノ後元号ヲ建テ一世ノ間ニ再ヒ改メサルコト明治元年ノ定制ニ従フ
(この章自体なくなりましたが、10条のみ趣旨が生きてます。つまり、退位条項はありません)
(11条は削除。12条は元号法に引き継がれたのでしょう)
第三章 成年立后立太子
第一三条 天皇及皇太子皇太孫ハ満十八年ヲ以テ成年トス
第一四条 前条ノ外ノ皇族ハ満二十年ヲ以テ成年トス
(現行法と同じですが、年齢の違いの意図が分かりかねますが、摂政との関係?)
第一五条 儲嗣タル皇子ヲ皇太子トス皇太子在ラサルトキハ儲嗣夕ル皇孫ヲ皇太孫トス
第一六条 皇后皇太子皇太孫ヲ立ツルトキハ詔書ヲ以テ之ヲ公布ス
(儲嗣とは難しい和語。立太子の儀式を公式にやらないから現行法では削除?)
第四章 敬称
第一七条 天皇太皇太后皇太后皇后ノ敬称ハ陛下トス
第一八条 皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃親王親王妃内親王王王妃女王ノ敬称ハ殿下トス
(譲位制度がない以上、上皇という身分もない、がポイントです)
第五章 摂政
第一九条 天皇未タ成年ニ達セサルトキハ摂政ヲ置ク
天皇久キニ亘ルノ故障ニ由リ大政ヲ親ラスルコト能ハサルトキハ皇族会議及枢密顧問ノ議ヲ
経テ摂政ヲ置ク
第二〇条 摂政ハ成年ニ達シタル皇太子又ハ皇太孫之ニ任ス
第二一条 皇太子皇太孫在ラサルカ又ハ未タ成年ニ達セサルトキハ左ノ順序ニ依リ摂政ニ任ス
第一 親王及王
第二 皇后
第三 皇太后
第四 太皇太后
第五 内親王及女王
第二二条 皇族男子ノ摂政ニ任スルハ皇位継承ノ順序ニ従フ其ノ女子ニ於ケルモ亦之ニ準ス
第二三条 皇族女子ノ摂政ニ任スルハ其ノ配偶アラサル者ニ限ル
第二四条 最近親ノ皇族未タ成年ニ達セサルカ又ハ其ノ他ノ事故ニ由リ他ノ皇族摂政ニ任シタルトキハ
後來最近親ノ皇族成年ニ達シ又ハ其ノ事故既ニ除クト雖皇太子及皇太孫ニ対スルノ外其ノ任ヲ
譲ルコトナシ
第二五条 摂政又ハ摂政タルヘキ者精神若ハ身体ノ重患アリ又ハ重大ノ事故アルトキハ皇族会議及枢密
顧問ノ議ヲ経テ其ノ順序ヲ換フルコトヲ得
(関白はさすがにない。明治の御代でも女性も摂政はできた事にはビックリ)
第六章 太伝
第二六条 天皇未夕成年ニ達セサルトキハ太伝ヲ置キ保育ヲ掌ラシム
第二七条 先帝遺命ヲ以テ太伝ヲ任セサリシトキハ摂政ヨリ皇族会議及枢密顧問ニ諮詢シ之ヲ選任ス
第二八条 太伝ハ摂政及其ノ子孫之ニ任スルコトヲ得ス
第二九条 摂政ハ皇族会議及枢密顧問ニ諮詢シタル後ニ非サレハ太伝ヲ退職セシムルコトヲ得ス
(太傅と正字で書いてくれれば調べる事も無かったのに・・・現行法ではありません)
第七章 皇族
第三〇条 皇族ト称フルハ太皇太后皇太后皇后皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃親王親王妃内親王王王妃
女王ヲ謂フ
第三一条 皇子ヨリ皇玄孫ニ至ルマテハ男ヲ親王女ヲ内親王トシ五世以下ハ男ヲ王女ヲ女王トス
第三二条 天皇支系ヨリ入テ大統ヲ承クルトキハ皇兄弟姉妹ノ王女王タル者ニ特ニ親王内親王ノ号ヲ
宣賜ス
第三三条 皇族ノ誕生命名婚嫁薨去ハ宮内大臣之ヲ公告ス
第三四条 皇統譜及前條ニ関ル記録ハ図書寮ニ於テ尚藏ス
第三五条 皇族ハ天皇之ヲ監督ス
第三六条 摂政在任ノ時ハ前條ノ事ヲ摂行ス
第三七条 皇族男女幼年ニシテ父ナキ者ハ宮内ノ官僚ニ命シ保育ヲ掌ラシム事宜ニ依リ天皇ハ其ノ父母
ノ選挙セル後見人ヲ認可シ又ハ之ヲ勅選スヘシ
第三八条 皇族ノ後見人ハ成年以上ノ皇族ニ限ル
第三九条 皇族ノ婚嫁ハ同族又ハ勅旨ニ由リ特ニ認許セラレタル華族ニ限ル
第四〇条 皇族ノ婚嫁ハ勅許ニ由ル
第四一条 皇族ノ婚嫁ヲ許可スルノ勅書ハ宮内大臣之ニ副署ス
第四二条 皇族ハ養子ヲ爲スコトヲ得ス
第四三条 皇族国疆ノ外ニ旅行セムトスルトキハ勅許ヲ請フヘシ
第四四条 皇族女子ノ臣籍ニ嫁シタル者ハ皇族ノ列ニ在ラス但シ特旨ニ依リ仍内親王女王ノ称ヲ有セシ
ムルコトアルヘシ
(コメントが難しいので、別の機会に)
第八章 世伝御料
第四五条 土地物件ノ世伝御料ト定メタルモノハ分割譲与スルコトヲ得ス
第四六条 世伝御料ニ編入スル土地物件ハ枢密顧問ニ諮詢シ勅書ヲ以テ之ヲ定メ宮内大臣之ヲ公告ス
(皇室財産についての国家管理が厳しくなった為だと思いますが、この章は消えました)
第九章 皇室経費
第四七条 皇室諸般ノ経費ハ特ニ常額ヲ定メ国庫ヨリ支出セシム
第四八条 皇室経費ノ予算決算検査及其ノ他ノ規則ハ皇室会計法ノ定ムル所ニ依ル
(憲法の規定に従う・・・でしょうか?。この時代は増額以外は議会の権限が及ばなかった)
第十章 皇族訴訟及懲戒
第四九条 皇族相互ノ民事ノ訴訟ハ勅旨ニ依リ宮内省ニ於テ裁判員ヲ命シ裁判セシメ勅裁ヲ経テ之ヲ
執行ス
第五〇条 人民ヨリ皇族ニ対スル民事ノ訴訟ハ東京控訴院ニ於テ之ヲ裁判ス但シ皇族ハ代人ヲ以テ訴訟
ニ当ラシメ自ラ訟廷ニ出ルヲ要セス
第五一条 皇族ハ勅許ヲ得ルニ非サレハ勾引シ又ハ裁判所ニ召喚スルコトヲ得ス
第五二条 皇族其ノ品位ヲ辱ムルノ所行アリ又ハ皇室ニ対シ忠順ヲ欠クトキハ勅旨ヲ以テ之ヲ懲戒シ其
ノ重キ者ハ皇族特権ノ一部又ハ全部ヲ停止シ若ハ剥奪スヘシ
第五三条 皇族蕩産ノ所行アルトキハ勅旨ヲ以テ治産ノ禁ヲ宣告シ其ノ管財者ヲ任スヘシ
第五四条 前ニ条ハ皇族会議ニ諮詢シタル後之ヲ勅裁ス
(現行憲法では特別裁判所を認めませんから、この章は削除となります)
第十一章 皇族会議
第五五条 皇族会議ハ成年以上ノ皇族男子ヲ以テ組織シ内大臣枢密院議長宮内大臣司法大臣大審院長ヲ
以テ参列セシム
第五六条 天皇ハ皇族会議ニ親臨シ又ハ皇族中ノ一員ニ命シテ議長タラシム
(要するに「家法」だということですよ。)
第十二章 補則
第五七条 現在ノ皇族五世以下親王ノ号ヲ宣賜シタル者ハ旧ニ依ル
第五八条 皇位継承ノ順序ハ総テ宝系ニ依ル現在皇養子皇猶子又ハ他ノ継嗣タルノ故ヲ以テ之ヲ混スル
コトナシ
第五九条 親王内親王王女王ノ品位ハ之ヲ廃ス
第六〇条 親王ノ家格及其ノ他此ノ典範ニ抵触スル例規ハ総テ之ヲ廃ス
第六一条 皇族ノ財産歳費及諸規則ハ別ニ之ヲ定ムヘシ
第六二条 将来此ノ典範ノ条項ヲ改正シ又ハ増補スヘキノ必要アルニ当テハ皇族会議及枢密顧問ニ諮詢
シテ之ヲ勅定スヘシ
(58条は、なんか背景がありそうです。別に調べてみよう)
読む比べるとなかなか含蓄があります。
特命を受けたお役人方が鳩首議論中でしょうが、結構歯ごたえがありますから、確かに数年がかりの作業でしょう。
明治以前の法制の調査も必要ですし、法学部よりも史学部の世界ですねえ。
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