2017年4月5日水曜日
汝れや知る みやこは野辺の夕雲雀
話題だというから、ついつい購ってしまった。
第14版
新書版歴史書としても稀有の売れ行き。
話題先行の文芸(もどき)書ばかりが持て囃される時代への反発とも警鐘とも。
やはり良書は売れるのですよ(この程度で良書と言うかどうかは・・・)
室町時代が人気薄なのはよく言われることだし、国営放送の大河ドラマでも不人気の定評がある。
チョット難解な方程式を解くような時代だから、おバカ番組好きなテレビっ子向きじゃない。
しかし、こんな面白い時代はない。
建武の中興とその失政からの室町政権の到来(いわゆる通俗太平記の時代)
後醍醐崩御以降の南北朝騒擾(イメージ的には実のところ応仁の乱に似ているのです)
義満の王権簒奪と謎の死(あの暗殺が無ければ万世一系伝説は無くなったはず)
義満と世阿弥の微妙な関係(王権と芸術の葛藤って、利休と秀吉以上に面白い)
恐怖の天魔王義教の天下布武と謀殺(信長の原型のようなこの六代将軍って再評価されていいのですが)
・・・そして、分水嶺としての応仁の乱
あとは、ご承知の戦国時代
この時代の人気がないのは、単純でなく複雑怪奇だから理解するのがしんどいことに尽きる。
国際外交が下手な倭人らしい。
単純に東西だか紅白に分かれての大決戦なんてことを期待するからそうなる。
世の中って、今日の友は明日の敵、桑田変じて海となり、一夜にして上下がひっくり返るのですよ。
応仁の乱は、次の将軍職の座をめぐる権力闘争であることには間違いはないが
それ以外の様々な利害関係が複雑に絡み合い日本中で騒擾を繰り返した・・・これに皇位が絡めば南北朝騒乱と同じだ。
実際は後南朝の末裔だかなんだかを担いだのですが、どうもインパクトがなかった。
二度あることは三度あるって、幕末でも同じことがあれば面白かったが・・・
馬鹿受けするほど斬新なコンテンツとも思えないが、興福寺をセンターに据えたので人気が出た(?)のならば慶賀の至り。
もっとも、応仁の乱も前後の混乱も相まってって時代を揺るがしたって事ですので、物語の始まりと終焉の設定の仕方が
難しいです。
表題に戻りますが・・・
なれや知る みやこは野辺の 夕雲雀 あがるをみても 落つる涙は
飯尾某なる当時の一流の文化人の読んだ名句とされます。
荒廃した京の都の風景を、初句切れで緊張感をだし、あとはあがるとおちるの対句表現。
技法としては単純で、そう褒めるようなものでもないが、平明でスッキリしている点では好感度大かな
舞い上がる雲雀に呼びかけたと解釈する向きもあるが、、、?
後世の歴史を知る立場から読み解けば・・・
武家政権の定着とともに衰退する王朝文明は、この応仁の乱により絶望的なまでに「落ちて」しまい
これからは野鄙下劣な下流民が跳梁跋扈狼藉無頼になり「上がって」いく時代になったのだと旧時代人は涙する・・・ってことですよ。
旧世界は完全に破壊され、、、だから毎度の引用ですが、内藤湖南先生の一喝となる。
実力だけがモノを言う時代で、誰でも偉くはなれるって素晴らしい時代。
自由狼藉世界と四条河原落首に喝破された時代。
歴史上そう何度もあるわけじゃないが・・・
もっとも、最後に笑うのは多くの場合は、中流階級以上です。
マルクスもエンゲルス、レーニン、トロッキーも中流家庭出身で、貧農と言えるのはスターリンくらい。
戦国時代の下克上で成り上がった最後の勝者だってご承知の通り
(もっとも、口にしてはいけない出自の秘密があるらしいが・・・まさに口にしてはいけない)
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