2017年6月7日水曜日
絶望の死
大西睦子さんの記事(フォーサイト)を引用します。
彼女の記事もプリンストンの先生の論文の引用ですから、孫引きになります。
従って引用部分は、彼女の意見というより多くはオリジナルの見解だということです。
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米国の白人中年の死亡率が増え続けている。
原因は、薬物、アルコール、自殺による「絶望の死」である。
絶望の死は、今日では農村部から大都市に至るほぼ全米に深刻な影響を及ぼしています。
最も深刻な地域は東南中央部(アラバマ州、ケンタッキー州、テネシー州、ミシシッピ州)で・・・
絶望の死は、とりわけ高等学校以下の学歴しかない白人米国人を襲っています。
2つのアメリカがあるようです。
1つは、大学に行った人のアメリカ、そしてもう1つは、そうでなかった人のアメリカです
自殺率は、男性が女性よりもはるかに高まりました。
そして、薬物過剰摂取、およびアルコール関連の肝臓病による死亡率も男性の方が高い。
ただし死亡率の高さは、高校までの教育しか受けていない男女に同じ傾向を認めます。
これは長い間米国で続いている問題の、氷山の一角に過ぎないと考えています。
私たちは、これを白人労働者階級の衰退の一部と捉えています。
それらの仕事(ブルーカラーのこと)はゆっくりと崩壊し、より多くの男性が、低賃金で質の悪い、非正規雇用という悪条件の労働市場で働くことを余儀なくされるようになりました。
そのため、彼らは結婚することが難しくなり、自分の子供をもつこともできません。
時間が経過するほどに、社会の機能不全が高まっています。
そして、本来であれば得られていたであろう地位や財産を失ってしまった、という感覚だけが強まっていったのです。
これは典型的な自殺の前触れです。
こうした米国の白人中年の「絶望の死」急増の原因としては、まず所得の低下が考えられるかもしれません。
ただし、白人の平均所得は、今でもヒスパニックや黒人より高いので、所得だけではすべての説明がつきません
もしあなたが何らかの特権を持っていて、それを『平等』『公平』という名のもとに抑制されるとしたら、
おそらく『平等』は『抑圧』だと感じ始めるでしょう。
しかし、白人のそうした悲観主義と比べると、黒人にとっては何世紀にもわたって『平等』は『希望』を意味してきたのです。
黒人とヒスパニック系は、経済状況が悪化したとしても、もともと白人ほどには期待が持てない境遇であった可能性があります。
その意味で対照的に、教育レベルが低かったことで高い技能を持てなかった白人ほど、
人生に失望を感じ、絶望の死を選択するのかもしれません。
すくなくとも欧米世界では、なぜか米国だけで絶望の死が増加している。
英誌『エコノミスト』は、絶望の死の根底的な原因は、米国のセイフティネット、特に健康保険制度の欠如であると指摘しています。
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労働市場の変化の分析とか首をかしげたくなる部分もありますが、
ある種のトランプ現象の解説ですが、一方でオバマケアを廃止しようとすることの論理的整合性がない。
このような相関が成り立つのであれば、
総中流意識の崩壊と上下分化
所得の低下
非正規労働者の増加
未婚率の増加
等々が顕著な倭国こそ自殺者が激増してしかるべきだが、公式統計は逆の傾向を示す(自殺と絶望死は概念が別だが)
バブル崩壊後の奈落の底状態から経済状況が劇的回復を遂げたからか
黒人やヒスパニックのように低位安定状態が当たり前と思うようになったからか、よくわからない。
もっとも先進国の中では際立って自殺率が高いことに定評があり、アメリカンを論う資格はない。
その意味で自殺者が減ったというよりもあまりな異常値が是正されただけなのかもしれない。
また国別自殺率は、所得との相関を強く示すが、国内のジニ係数相関は示されない・・・とかなんとか
実のところ一番効果的な社会政策がなんだかよく分からない。
最近は聞き及ばないが、宗教の戒律の差異なる論には懐疑的だ。
来世や転生を売り物にしない宗教はまず存在しない、というか客寄せにならない教義を掲げる宗教はありえない。
生まれ変われば、あの世なら幸せになれると思う向きには、死とは単なる通過点であり、そう重大な事ではない。
教育程度の高さは自殺を回避するといわれれば、それはそうかな?って気もする。
哲学者で自殺した例は、きわめて稀だ。
古代ギリシアの哲学者でサンダルをきれいにそろえて何とか山に飛び込んだ・・・って、紘子さんの旦那が
芥川賞受賞作品で披露しているが、どうもこれは怪しい。
文学者では結構例があるが、まあ文学って無頼の徒の所業ですから、不思議でもなんでもない。
明確な自殺でなくとも、いわゆる「絶望死」で生涯を終えるくらいでないと、一級品ではないのだ。
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