2017年10月1日日曜日
いはで思ふぞ言ふにまされる
和歌の下の句めいていますが、上の句はありません。
大和物語(平安時代初期の歌物語)の有名な説話
平城天皇が大事にしていた鷹を担当者が逃してしまった。
叱責覚悟で奏上したが、帝は特段なにも仰らず、
ただこのように呟かれた。
歌物語ですから、この下の句の上の句はどんなんだったと詮索がましいが、
実は.....と言うオチである。
口に出して嘆くような哀しみはその程度でしかない...
倭の心象風景らしいエピソードです。
今風(と言っても昭和だが)になぞらえれば
男は黙ってなんとかビール!(視聴者に麦酒泡吹きかけるって失礼だよね)
今時のグローバル世界では通用しないが、
殊更にけたたましく言挙げしない事がゆかしいと考え、
それが様になる民族がいたっていう事です。
だから変に肩に力入れたメッセージ性の高い藝術品は空回りする。
この世界の片隅で
夕凪の街桜の国
意識高い系二番館としては満足げなカップリングだと思います。
だから然程暇でもないが、脚を運ぶ素浪人もいる。
感想はと言われれば、ならのみかどのように答えてもいいが、
亀井文夫さんの傑作くらいはお勉強された上での渾身の一作かなって。
亀井さんの戦意高揚映画「たたかふ兵隊」こそ
大袈裟に言挙げしない事で最大の厭戦映画となり得た。
ふてぶてしいことに、製作費は軍の予算なのです。
映像と字幕と音楽のみで、つまらないセンチメンタルな言葉は排除。
戦後の数ある反戦映画がつまらないのは、行間にグリーンゾーンに体をかわした
ヘイワ主義者の矜持のなさが垣間見える事
彼らって一旦事あれば、簡単に且つ極端に偏向するのよ。
例をあげればキリがない。
その辺が色濃いのが後者
ゲンバクをテーマに据えると湿度たっぷりになるのは我慢してもいいが、
誤解を生みそうだが、無定見的被害者意識タップリに描かれると違うだろう!って。
無能な戦争犯罪人と迎合した連中による戦争の犠牲者だと断じないのであれば
情緒的なイデオロギーめいたものをサブリミナルのように持ち込むものではない。
今の日本映画の一般水準からすれば佳作ではあるが、与しようとは思わない。
引き換え前者は実に素晴らしい。
映画でなくアニメなのが残念ともいえるが、アニメだから定型的反戦映画の縛りから解放されたのだろう。
日常性に埋没しながらも棘に刺さるような日々を薄墨色に描くのはアニメの特権。
淡々と今日を生きる。明日も生きる。
ちなみにどちらも原作は、こうの史代さんの漫画です。
勝手ながら憶測すれば、後者の実写化は悔いてませんか?
前者のように描けば良かったのにと、原作を読み嘆概する次第
昨今は漫画原作映画の大量生産ですが、
キラリと光る秀作もチラホラです。
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