2018年10月18日木曜日
世界一受けたい授業です!
真っ当な映画で、世界最長のタイトルは「マラー・サド」
オリジナルタイトルを、原題で気取って書けば・・・
The Persecution and Assassination of Jean-Paul Marat
as Performed by the Inmates of the Asylum of Charenton
Under the Direction of the Marquis de Sade
そんなクイズもどき話題で、後世に名を成すから
ピーター・ブルックのこの傑作舞台劇の映画版は
輸入版のDVDしか手に入らない。
オリジナルは演劇であるが(別に映画でもいいが・・・)
演劇が成り立つためには「黙した一人のヒトザルが空虚な空間に佇み、
もう一人のヒトザルが眺める・・・」だけでいい。
彼の言葉によれば「何もない空間」さえあればいい。
演劇を構成する多様なエレメントが生むものは「退廃」である。
なんか「前衛」って凄いのですが、前衛もいつかは後衛に堕するが、
彼は朽ち果てることにない前衛である。
まあ、これは世阿弥師の舞台劇と同じ理念ですから、
絶滅危惧種と言われながらも案外しぶとく^_^
シンプルな舞台装置の前に、シャラントン精神病院の患者たちの演技(治療目的)を
貴人・貴婦人たちが「見学」するという設定で、
シャルロット・コルデーによるマラー暗殺のエピソードが演じられる。
有名な史実であり、サドがこの精神病院に収監されていたことも事実であるが、
マラー暗殺劇を執筆したかどうか・・・どうも虚構らしい。
演劇が「虚実皮膜の間」に成り立つとは近松の名言であるが、
ピーター・ブルックは「タイトロープ」という言葉を使う。
喜劇と悲劇は一本のロープの上の右左・・・
何もない空間
呆けた顔をした演者が数名
袖で、興味津々と眺める観客
それらをスクリーンを前にまじろぎもしない観衆
一本のドキュメンタリー「世界一受けたいお稽古」
演出家ピーター・ブルックのたぐい稀な創造の秘密が感じ取れるかもって感じ
しかし、凄いお稽古(授業)です。
大衆的通俗的なサンデル教授とは大違い
一流になるためのお稽古とはかくも深遠で哲学的なのか・・・
ちなみにこの映画ですが、
ドイツ国では、一流大企業やブンデスリーグのエリートクラブの研修ビデオに
使われているそうです。
このDVDをテキストに使うようなレベルの会社の経営ならしてみたい。
元IT社長として珍しく忸怩たる思いを感じさせました。
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