2018年12月4日火曜日
定家葛の呪い
中流程度のオンナがいいって、雨の日の宿直の夜咄で高貴な身分の若者は
経験したアバンチュールを語るのですが、
中流以下のオトコは逆に高貴さに憧れる。
二人の間にそんな感情の交わりがあったという証拠はない。
証拠がないから「秘めたる恋」である。
式子内親王は崩御された後白河上皇の娘であり、御子左系の歌人で俊成のお弟子。
従って、俊成の息子の定家とは姉弟弟子ってことになります。
年齢・身分はともかく、
二人とも歌人としての評価の高さは類をみない。
何時の世も「大物カップル」は、ゴシップネタですので、
単なるウワサかも知れません。
内親王はながく賀茂の齋院であった。
齋院とは、巫女であり、神の妻。
人並みの恋なんか許されるはずはない・・・(終生独身だったはず)
高貴なオンナの恋は難しいのは、
六条御息所(薨御した皇太子の妻)の例をひくまでもなく
なんごとなき内親王とパラリーガルの関係でも明らかです。
典型的な能のスタイル。
諸国一見の旅の僧あらわる(これは複式夢幻能といわれる形式の定番)
時雨に遭遇し、雨宿りしていると現れたのが・・・
里の女に化体した式子内親王の霊。
その「苦悩」を延々と語り、煩悩の払いを懇願するのです。
その夜、草木も眠る丑三つ時、
お墓のなかから式子内親王(亡霊)があらわれます。
絶世の美女だとの記述は読んだことはないのですが、
きっと気品のあるお方だった
霊女の面をつけ、相当に窶れています。
その絶景が、背筋を凍らせます・・・
旅の僧の霊験あらたかなお経のおかげで、魂の平安を得た式子内親王の霊は、
心静かにお墓に戻って行くハッピーエンド・・・
内親王は、五十歳で薨去されますが、定家は長寿で、八十をすぎて永らえた。
二人の間には恋愛感情があったというより定家のストーキング的感情があったと思うほうが面白い。
定家の残された長い年月は如何なるものであったか?
また、彼岸の地でふたたび見え得た時の情景や如何
謡曲「定家」では、定家葛が内親王の墓にまとわりつくという
おぞましい風景がモチーフであり、そのおぞましさに内親王が苦しむってところを
品位高い謡うのが味わいである。
仏の法力で、内親王の墓にまとわりつく定家葛は、一旦は墓を解き放つのですが
旅の僧が出立すると、またぞろゾンビのように
葛が墓石に絡まりつこうとするさまを暗示します。
本当はハッピーエンドではないという珍しい作りです。
しかし、まとわりつかれる被虐的な陶酔を味わっているって
解釈も可能であり、蓋しオンナオトコの関係は難しい。
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