大和の国の恋物語では「代筆」は当たり前。
王朝時代のプロ歌人は、高貴なる方の代わりに歌を読むことが職業的義務。
源氏物語でも、お姫様宛の貴公子のラブレターの代返はお局様のお仕事
なかなか才気ばしった書きっぷりが、住み込みのキャリアウーマンのセンスってもんでしょうか。
靡かず、袖にもせず、気を持たせ・・・
しかし、恋文代筆話は、これに止めを刺す。
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文武に秀でた快男児の彼だが、お面相がちょっと滑稽で絶美女に告白ができない。
親友のハンサム君は、文才はからっきしながら、同じように絶美女に思いをはせ、代筆を懇望してきた。
複雑な感情の快男児くんですが、友情も大事ってことで、渋々と・・・しかし、書き綴っていくうちに激しい感情移入が・・・
かような熱情に満ちた恋文に心動かされぬ女性があろうはずがない。
しかし、悪戯な運命の女神はハンサムくんを自らの膝下へ。
世を儚んだ絶美女は、修道院へ、
時世過ぎ、死期がせまった快男児くんは、今生の想い出にと修道院を訪ねる。
夕闇迫る中庭で、絶美女宛の「ハンサムくん」の恋文を読んで上げるっていう名シーン。
灯火がなくて、どうして文字が読めるの?
絶美女は、その時全てを察したのです。
命の灯火の燃え尽きる最後の時、快男児くん(シラノ)は、絶美女(ロクサーヌ)の腕の中で・・・笑みを浮かべながら
これが、男の羽根飾だ・・・!
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エドモン・ロスタンの原文をしらないのですが、辰野隆さんは「心意気」に「羽根飾」をあてる屈指の名訳!
仮にも新訳の依頼があろうと、先達の偉業をそのまま踏襲するほうが安全と言えます。
言葉は鬼神の心も動かす。
しかし、文才だけでは、女心はうごかなないこともある。
日本史で希代の悪人と言えば、高師直。
仮名手本忠臣蔵では、吉良上野介に化体されてます。
無類の女好きでもあったらしく、塩治判官の妻に横恋慕し、吉田兼好に命じて恋文をかかせたと太平記のエピソード。
史実かどうかは諸説芬々
分かっているのは、手痛くフられ激怒した師直は、冤罪で、塩治一族郎党を惨殺したってことだけ。
塩治夫人は、中味を読まずに、庭に捨てたって書いてますから兼好法師の才能以前ということのようです。
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