2014年6月11日水曜日
そして父になる・・・・のは誰か?
アントワネットは、当時の習慣として「公開出産」を行ったと
高名なステファン・ツヴァイクの評伝に記述されている。
そんじょそこらの犬猫同然の身分ならいざしらず、ルイ17世ともなれば・・・
しかし「母子関係」はそれで明らかになるとしても、「父子関係」はどう証明するのか?
人類にとっての最大の難問の一つであり、明治の賢人たちは知恵を絞り・・・
妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と「推定」する。
婚姻の成立の日から200日を経過した後
又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、
婚姻中に懐胎したものと「推定」する。
・・・と法律の定めをもうけた(772条)
しかし、あくまでも「推定」であって「見做し」ではない。
どちらもある事実や法律関係が不明瞭なときに、
本来そうでない状態を法律上本当の事実や法律関係として取り扱う「擬制」ですが、
その擬制力に大きな違いがある。
推定される以上、反論が許されるわけであり、
夫は「子が嫡出であることを否認する」ことができる。
しかし、嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から「1年以内」に
提起しなければならない・・・とされる。
さらに言えば「嫡出否認訴訟」は訴えの期間に制限がありますが、
嫡出推定でない場合は「親子関係不存在確認訴訟」がありますが、これには制限がない。
いささか変な話なんですが、前者は家族関係の安定というより「相続手続の円滑化」が
主眼であったように思えます。
さて、訴訟フリークにはたまらない(笑)
最高裁で弁論が開始されました。
http://mainichi.jp/select/news/20140610k0000m040054000c.html
DNA鑑定で親子関係が否定されました。
鑑定精度は知りませんが、まず間違いがないのでしょう。
下級審では、鑑定結果を根拠に親子関係を否定しましたが・・・
面白いことに、不倫妻は、親子関係否定を主張するのですが、寝取られ夫は
それでも親子関係を主張します。
訴状を読まずに面白おかしくネタにするのは不謹慎の極みなのですが、
なんか複雑な事情がありげです・・・
将来、確実に金のタナゴを産んでくれそうな天才児なのかな?
普通に考えれば「嫡出推定否認訴訟」は期間制限がありますから、提訴は無理です。
それに「嫡出非推定」でないと親子関係不存在の訴えはできないはずです。
しかし、実体法も手続法も、DNA鑑定なんか想定しない時代の産物であり、
解釈と運用の柔軟性は当然必要なんですが・・・一体どういう婚姻関係だったんですかねえ
どうも最高裁は従前の判断を変更するのではないか・・・とささやかれます。
ちょっと前に「嫡出子と非嫡出子の相続割合差を違憲」とする仰天判決を出してますから
どうも、この手の話題には、原理主義的になるように思えます。
背景を忖度しないと「親権をめぐるドロドロ劇」に対して適切な判断ができませんので
どっちの主張が正しいか・・・は論評しません。
婚姻状態だけが親子関係を推定しうる時代でもなく、
六十年前の分娩台帳が残っている保証もなく
DNA鑑定で親子の証明ができても、鬼畜はどこにでもおり
普通に言えば「幸せな家族」を担保するエレメントはなにか?って
考える素材に格好かもしれません。
そうそう、だからといってなんでも訴訟ってわけにも行きませんからね。
権利の濫用って、このような場合にも適用可能なのです。
たしかそういう最高裁判決がありました(脱帽したくなる名判決)
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