その国民なり民族にとってのソウルフルでノスタルジックな心象を「原風景」とか言うとする。
倭人ならば、多少の刷り込みもあるが、里山付近の
さとわのほかげも もりのいろも
たなかのこみちを たどるひとも....なんて光景。
トラディショナルなアメリカンの原風景ってなんだろう。
少なくとも西海岸の風景ではない。東海岸ならばラブクラフトやキングの描くおどろおどろしい魔物が蠢きそうな森の闇だが、普遍的なアメリカンな風景ではなさそうだ。やっぱり、ノーマンロックウェルがイメージする中西部、ミシシッピ川の流域、トムソーヤーとかハックルベリーフィンが出没した「一見長閑な」世界が一番なんとなく似つかわしい。
知名度からすればトムソーヤーが圧倒で、ハックルベリーはトムのワル友の浮浪人。
毒にも薬にもならないお子様ランチみたいなトムソーヤーの冒険だけを読んで、そこでマークトウェイン読書遍歴が止まるようならば、「徒然草の仁和寺の坊主の石清水参拝」みたいなもの。
ハックルベリーフィンの冒険を読んでこそ!
けだし、毒にも薬にもなりますが....匙加減が難しい。
かなりな「劇薬」
南北戦争のしばらく前のハックルベリーの世界には、
貧困不潔なホワイト
無知蒙昧無学なホワイト
レイシストなホワイト
作中で二百回以上もニガーと呼ばれるアフリカン
バイブルか迷信にすがるヒトザル....
しか、と言うと多少大袈裟だが、そんな登場人物しか登場しない。根っからの悪人ではなさそうだから余計に始末に負えない。
アメリカの国民文学だと言われるが、公立図書館に配備はされておらず、学校では、かの「ライ麦畑」と並んで禁書目録に名を連ねる。
実は本当のアメリカンって....とはよく聞くはなしだが、そんな事は昔から分かりきっていたのですよ。
しかし、知りたくない現実には目を背ける...とは更に大昔にマキャベリが喝破していました。
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