2025年1月10日金曜日

荷風の発禁本

 



普通ならば、想起するのは「四畳半襖の下張り」。
しかし、この小編には、荷風名義作品と伝荷風作品の二つがあり、後者が洛陽の市価を暴騰させた文学性あるいは芸術性の高い作品。

戦中戦後に地下出版として密かに流通したが、作者も版元も不詳のため罪科に問われるなかったが、、、70年代の初め、野坂昭如が編集人時代の「面白半分」に掲載され、アタシみたいな一部のマニアしか読まない雑誌ながら一躍有名になる。

最高裁まで争われたが、当然ながら被告敗訴。


しかしながら、それなりに意義のある裁判だった。

猥褻概念の憲法ともいうべき「チャタレイ三条件」の枠組を堅治しつつも、新たに「下張六条件」を十分条件として明示した。

.....

  1. 当該文書の性に関する露骨で詳細な描写叙述の程度とその手法
  2. 右描写叙述の文書全体に占める比重
  3. 文書に表現された思想等と右描写叙述との関連性
  4. 文書の構成や展開
  5. 芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の程度、
  6. これらの観点から該文書を全体としてみたときに、主として、読者の好色的興味にうつたえるものと認められるか否か
.....

雑誌のコピーはいまでも書庫のどっかにあるはずだが、残念な事に、当該作の現代語訳が掲載された方の雑誌は紛失した。
色んな方が訳業に加担しており、、、まことに秀逸なのは
偏差値程度高等な女子高生(氏名不詳)の現代語訳

かなりの箇所が「ココントコロヨクワカンナイヨ」の連発

そこそこの倭人でも、この雅俗混合擬古文を読みこなすのは大変。
つまり、興奮もしないし、羞恥心も感じないし、、、それでも猥褻図画かね?


毎度のように長いマクラです。
荷風の発禁本というから、わざわざ公設図書館で借りてきたのが「ふらんす物語」
確かに初版刊行が差し止められ、その後かなり補筆修正されたらしい。
アメリカやフランス時代の放蕩三昧の赤裸々な告白って言うから、、、この岩波文庫版は初版当時のままだし



勢いこんで読み出したが、予想外な内容に戸惑い、つまらないなあって
社会批判的な部分が忌避されただけのことだ
断腸亭日乗の方がはるかに過激。
しかし、東洋からの異邦人の旅日記と思えば、憧憬やら嫌悪とかさまざまな感情が混然とするさまはある種面白い。
それなりにベストセラーだったことには納得。


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