2025年2月16日日曜日

筒井康隆の「敵」....承前

 




オリジナルの小説を読み終わり、映画版とあれこれ対比しながらの楽しい独酌。


文庫版の解説(川本三郎さん)によれば、老人文学の傑作らしいが、文学というよりも、虫瞰的な私小説だ。古希を過ぎた独居老人の静謐にした端正律儀な日常のアレコレを章立てしてアレコレ書き綴る。

毎日が判を押したように、、いやいやそれでも毎日のように事件は起きる。



憎からざるアラサーの教え子が稀にやってきて終電ちかくまで。近所のバーでバイトする仏文科の女学生も

触れなば落ちん雰囲氣だし、二十年前に死別した色白美人の妻はいまでも夢に出てくる。そう、?アラサーも女学生も現実だか虚構か儀助の妄想か、虚実はだんだん判然としなくなる。



映画版は、小説のエピソードを換骨奪胎しながらそれとなく盛り込んでいる。

違いは、、、エンディング

儀助は、毎日の家計簿から将来の赤字累計額と貯金額の慚減を予測し、その時の自裁の仕方をアレコレ考えている、、、それもまた楽しい

小説では、春雨の昼下がりに雨垂れの微かな音が消えれば儀助の心臓の鼓動が止まる時....風に終わるのだが、映画版では、遺言状の開示である。



どっちがいいかの判断は人それぞれ。

なんともいい難い。

リアリズム的に始まった物語はシュールになり、またリアリズムに戻っていく。

三人のオンナはシュールの世界にしか登場しない。


ヒトザルは昔のオンナを思い出さなくなると、、、余命がヤバいって事らしい(^^)

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