2026年10月9日金曜日

本当にあった話の話

 



口コミで静かにヒットはしない、、、と思うが、本当は映画通がアート系のミニシアターに押しかけるはずだと製作陣は期待したんだろう、、、


芸達者な豪華な俳優陣

愛人が居ての夫殺しって唆ります

なによりも、バックステージものに外れなし


先ず鴻池留衣さんの原作を読むべきだったかなあ?

脚本はかなり改変している雰囲気ですから、その辺りの予備知識がないと、メタ構造の作品は理解しにくい。


キャプションでは「実際にあった事件」というが、そんな連続殺人事件は聞いた事がないし、連続殺人というが殺されたのは一人だけ(?)

虚構の中で「実際にあった」と言っているだけ

その虚構の物語を実際に舞台の役者が演じようとしている。その演じている様が作りものの映像となり、それを生身の観客が観ている。


芸といふものは実と虚との皮膜の間にあるもの也。

虚にして虚にあらず、実にして実にあらず、

この間に慰(なぐさみ)が有もの也


とは、近松の芸論

平たく言えば、実(現実)ばかりじゃ退屈になるし、虚(つくりもの)まみれはどっしらけ。

観客を唸らせる(感動させる)には、虚実が判然としない境界の中にある「芸」だということ。


しかし、いつまでもどこまでも判然としない曖昧模糊の状態のママには限界がある。

アタシの忍耐は途中で切れてしまった。

もう一度観たら、印象が変わる可能性は高いが、、、そこまで感情移入するものでもない。









2026年10月8日木曜日

それからの源氏物語

 



よくよく考えれば、レディムラサキの狡猾な意図だかどうかは分からないが、肝心な山場を書いていない。

藤壺中宮や六条御息所との馴れ初めとか、唐突におはなしが終了する宇治十帖のさらなる展開とか、、、


お節介な誰かさんでなくてもスピンオフというか偽書を書いたりしたくなる。

ヒカルくんの12歳から17歳の多感な時期を書いた帖がないことはさておき、ヒカルの晩年と尻切れトンボな宇治十帖の続編について、、、偽書である「雲隠六帖」の波瀾万丈な展開は実に面白いのです。


なにぶんに大河小説ですから、大抵は須磨明石あたりの帖で挫折するようですが、本当に面白いのは、前半の「花から花へ」ってなオンナ遍歴ではなく、後半の二股愛やら不倫やらのどろどろソープオペラまみれ。

簡単に説明できないくらい複雑な関係で、コレに比べれば芸能界相姦図の方がまだ清廉。

その辺りを、レディムラサキの実作と偽書をマージしてストーリーを展開してみるに、、、、



薫大将はヒカルの妻(女三の宮)が頭中将の息子(柏木)と不倫して出来た息子で性格は優柔不断。

薫と匂宮(ヒカルの外孫)はヒカルと頭中将みたいなライバルにして親友

本命は別なもんだから、薫は当てがわれた宇治の姫君(中君)を女衒宜しく匂宮に差し出す。後に匂宮は即位し中君は中宮にまで出世した。

逃した魚が惜しくなり、薫は改めて中君に言い寄り不倫の果てにさらに、、、

ややこしい因果ばなしですが


帝の妻(藤壺)と不倫したオトコ(ヒカル)が不倫されて出来た子供(薫)が帝(匂宮)の妻と不倫をして子供を産む、、、


多少時間軸を戻して、中君を失った薫は三女(浮舟)に手を出す。首尾はよかったが、モタモタしているうちに匂宮に寝取られてしまう。典型的な三角関係でその清算はオンナの入水

そして浮舟は発心し、薫をふり切り出家、、、で正典の方は終わるが、、、

偽書ではあっけらかんと浮舟は、現世に帰ってきて薫と結婚、、時は流れて数多い登場人物は鬼籍に入り、二人は仲良く出家で大円団。



なりふり構わず書いてしまえば、書かれていないこと、、、余白がある事で、この大河小説の素晴らしさが担保されてるってよくわかります。




2026年10月5日月曜日

ディスクロージャーデイ

 


実は「ディスクロージャーデイ」の予備知識はあまりなかった。

たた、お気に入りのエミリーブラントがヒロインだからってだけ



おおむかしに見逃したようなので動画配信サイトで斜め見したのが「SUPER8」

 映画オタクな少年たちが8ミリ撮影で、とんでもないものを映像に記録してしまった事は微かな記憶。

プロットや造形、話の展開からして、かのスピルバーグの名作へのオマージュであることは、段々に明らかになる。

そんなこんなな延長線上のSF映画のひとつだと、、、、でも「ウソだろう」


これは、優れてポリティカルスリラーです。

機密を秘匿し、あまつさえ秘匿や防御の主体を政府や軍ではなく非政府機関に担架させ、情報公開義務の縛りを回避する狡猾さ。

漏洩した最高機密の行方を巡るスリリングな展開の果てに、KCのローカル局が緊急特番。瞬く間に緊迫する国際紛争ニュースを全米から全世界へ、、、、でもアジア圏で報道をリーディングしたのは日本国のメディアではなかった(まあ当然でしょう)

地球外生命体とのコンタクトの前では、人類同士の小競り合いなんか瑣末なもので、敵味方に分かれて対峙する兵隊も銃を置き同じスマホ画面と睨めっこ(^^)


2001年のオデッセイに登場したモノリスが手のひらサイズになり重要な役割をします。キューブリックは「人類進化のトリガー」として描き、今回も様々な役割を

エンディングでは「人類に対する重要なMSG」が伝えられ、、、るはずでしたが、

アンカーマン役のエミリーブラントの、、、Listen  だけで画面は暗転

わかりましたよ、自分で考えなさいってことだ。


https://youtu.be/ebns2uhHZMM?si=waZlZemVJRmRJz8x


そう言えば、あのお騒がせ大統領が、様々な機密情報を公開するとぶち上げています。

実際に開示はされているらしいが、衝撃的なものはなにもないもんでニュースにならない。多分だが「カモフラージュのカーテン」に隠されたまま非政府機関のどっかが隠し持っているに違いない。




2026年10月4日日曜日

リア

 



思いつき程度のウケ狙い用語ですが、なんでもだれでもを精神病理にしてくれる便利な似非専門用語?
意味するところを詳らかにしないが、、、

地位、権威、財力を失った中高年が変化した立場に思い至らず、相変わらず偉そうにふるまう見苦しいさま
或いは
偉そうにしても無視反撥嘲笑され怒り爆発し、更にみっともないさま

のことらしい。

要するに、キレる中高年(^.^)

身から出た錆なんだが、はた迷惑だし暴力沙汰にもなるから放置も出来ない。


シェイクスピアの悲劇のなかでも最高峰、、、と言われると得心。
しかし、黒澤翻案映画「乱」は更に悲劇的

高齢者には教訓的なエピソードですが、ヒトザルは体験からは多少は学ぶが、歴史や文芸からは学べない。

!
地位や財産をホイホイ渡しちゃダメなのよ。
耳障りの良い「世代間資産移転政策」なんかに騙されてはいけないって、優れて教訓的です。
何時迄も地位に連綿、、、なんて非難しますが、これは正しい行動だということ。

巧言令色に騙されるのはアホだし、阿諛追従は避けるに如かず。

大体は、末っ子が一番まともと決まっています
リア王の三姉妹もシンデレラのそれもまた然り。
そういえば、ブーフーウーもそうだ。
この映画の兄貴二人も邪悪ではないが、怠け者とか文句たれ。


シェイクスピア版リア王では優しい末娘は姉の手で死刑ですが、黒澤版リア王は更に悲惨

父は長男次男により追放、
三男に救われるが、三男は次男の手で殺され、父は狂死。
長男も次男の手で謀殺され、次男も早晩隣国の侵略で滅びます。


やっぱり「元就の三本の矢」は正しい。骨肉相争う愚は一族の滅亡を招くのです。

毛利元就のこのエピソード自体は虚構ですが、遺訓としては一族に長く継承され、この三つの家系(本家である毛利と吉川、小早川)は今に残り、、、良く知りませんが仲良しなんでしょう




2026年10月3日土曜日

不思議のモネ

 


睡蓮はさほど好きでもない、、、というか、持ち運びのできないサイズの絵画はリスク管理上難があるから視野外

「日傘をさす女」は大好きです。

印象派絵画の嚆矢である「印象・日の出」は、、、なんとも不思議な絵画という「印象」


浅学菲才なアタシは「日傘」のように連作でヴァージョンが複数あると思い込んでいた。Wikiの画像を観てそう思わない方がどうかしている。

さにあらず、たった一枚がパリのマルモッタン・モネ美術館にあります。

その理由は、印象派の技法に起因したり、修復のビフォーアフターとか、、、かなり煩雑だから略。

不埒な事に、複製画の見栄えの為に色変を平気でやる場合もあるとか

なんにせよ本物らしからぬ複製が横行していますから「本当のモネ」は本物を観るしかないが、来日はしばらくは期待出来ない。

ただ大塚国際美術館には原寸大の筆跡の凹凸も同じ陶板版がありますから、これで我慢するかな




モネと時間旅行


おフランスの芳雅がこれでもかってくらいの品位ある映画がいま小屋にかかっています。

フランス映画の上物はベルエポックの時代が舞台に如かず。

だから、アメリカンの小難しいユダヤ人監督のこの作品ばかりは気持ちよく小屋を後にできました。



字幕版の出来が悪いので、コチラを(^^)



ベタな邦題ですし、アート系ミニシアターにしかかからないから興収はしれてますが、記憶には残る名品

現在と、ヒロインの若い頃の時代とその母の時代。舞台はパリとノルマンディー。言葉通り時空を駆け抜ける映像空間


説明的すぎて面白さのわからない予告編


こっちはオシャレなオープニングシーン





2026年10月2日金曜日

AI映画創世記

 


中共で「全編AIで製作されたドラマがリリースされ大ヒット!」と某氏からご教授頂いたもので、良からぬインスピレーションが湧き、、、、(^^)


所謂「活動大写真」の創世は、1895年のリュミエール兄弟の「工場の出口」の劇場公開だとされる(先行する上映システムはあったが、映画史の上では「前史」の扱い)

そして、間髪入れず「不道徳な動画」が氾濫したと言われるが、まだ「ハードコアポルノ」には至らず、キスシーンとかストリップシーンとか、、、ネガもろくに残っていない。

一般的な意味での「ポルノ映画」は1910年前後にアレコレ製作された。結構時間がかかったのですが、映画という表現形式のテンプレートあるいはプロトコルが確立する為の時間を必要としたのだろうか?


世界最古の「ハードコアポルノ」と不正確に言われているのはアメリカで1915年頃製作の「フリーライド」

嬉しいというかなんというか、完全版ではないが、YouTubeにあるのですよ



https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%89


別に生唾を呑み込むような代物でもないし、今時のAVの建て付けとあまり変わるところはない。

しかし、一体何処で上映されたんだろうか?

今ならばスマホさえ有れば、、、富豪ならば、プライベート上映室くらいはもっていたのだろう



さて、2014年にAIによる実用的な動画生成の基盤が出来たと言われる。その基盤が進化し2022年に一般向けの「動画生成AI」が誕生した。

そして、昨今まあまあ鑑賞に耐える「AI映画」がでまわるようになったという訳。

過去の映画の進化プロセスからしても、時間軸的にそんなもんかなと思う次第だが、むしろ「今後どうなるんですか?」の方が重要。


AIの進化により「消える職業」って、あれこれいわれているが、先ずは「ポルノ俳優」だ(^^)

30過ぎたばあさんがレ◯プされるJK、、、みたいなグロテスクな映像をみたがる訳がないし、腹ボテよりはモデルなみにカッコイイ男優がいいに決まっています。

それに面倒な「AV出演被害防止・救済法」からも解放されます。


とは言え、普通の俳優が消えるかと言われれば、、、それはないと思う。

既に実写部門とアニメ部門は作品賞は別だし、早晩AI部門が出来るだけの事。

 

もっとも、AI映画を著作物として認めるか(著作権を認めるか)どうかの判断(定義)はこれからだし、著作物として認められないのであれば、賞レースからは失格。

概念的には「監督あるいは製作者等が主体的にAIを道具として活用して創作的意図を映像化した場合」には作品自体を著作物として認めるという事になるのだろうが、、、定性的な言葉を法律的に定義するのは難しい。

また、さまざまな知的財産(シナリオ、音楽、衣装デザインとか)の集合体が映画だから、個々のパーツの著作権も問題になるし、、、



システムって、単にツールじゃないかと士農工商の下にみくだしていた時代が懐かしい、、、というかわかりやすかった。


2026年10月1日木曜日

ヒカル源氏は教育パパ

 



オトコがまるでキワダタナイ小説が源氏物語。ヒカル君はさておき、ライバルの頭中将は狂言回しでしかないし、あとはロクな人物が登場しない。


みめ佳き娘を数多抱え、権力者に差し出し寵愛を受けるようになれば一家は安泰。官位官職や財は後からついてくる後宮政治がこの時代だから、オンナを中心に世界は回る。


ヒカル君は子供に恵まれず、、、と言っていいのか、まあ、娘は明石の田舎娘との間にひとりだけ(後年明石中宮となる大出世)息子は「公式には」ふたりというかひとりだか、、、

葵上の間に夕霧なる息子がいますが、亡くなった妻の実家に預けっぱなし。

晴れて成人式の時期となり、、、突然に父親らしさに目覚めたらしい


権力者(上級貴族)の子弟は最初からキャリア扱い、、、なんですが、ヒカル君は、敢えて最低の官位である六位からの勉学の道を歩ませる。普通ならば学習院みたいなヤワな学校に通うのですが、敢えて試験と受験地獄な道を選ばせた(当然だが忖度やえこ贔屓はまったくなし)

警察の世界で言えば、任官同時に警部になれるのに、ハコバンの巡査(交番勤務)から鍛えるようなもの。


この辺りは、学で身を立てるしかない中流貴族出身のレディムラサキの教育観の現れなんだろう。

勉学に忙しくて、オヤジさんのような合コンの暇もなく、手近な所の一つ屋根で暮らすおなさ馴染みの雲居の雁(頭中将の娘)と仲良くなってしまった。


頭中将は子宝に恵まれてはいますが、凡庸なオトコばかり、ムスメは二人しかおらず(実は隠し球があとふたつあるが、、、これはあとの話)、大事な将来の中宮女御候補の一人がさらわれそうになり、悲恋物語が始まるのが「乙女の帖」

なかなか面白い帖なのですよ

2026年9月30日水曜日

藤垣裕子氏

 



いまさら「女性初」なる慣用句が見出しになるようでは、その後進性を揶揄されるだけなんて皮肉はさておき


藤垣裕子


まったく存じ上げません。御尊名も初めて知りました。

専門は、科学技術社会論と科学計量学

なんでもが「論や学」になる昨今なんですかねえ?

全くイメージが湧きません。

主要な著作も、アタシが普段贖う版元の出版じゃないし、、、



学長選考のプロセスは、白い巨塔のように「教授会の選挙」だけで決まるものじゃなくて、、、


総長選考監察会議による候補者の絞り込み

学内意向投票

選考会議による最終決定


なんとも煩雑で大仰な手順です。

報道によれば、意向投票の圧倒的一位を押し退けての「決定」だそうです。

意向投票の投票権者は「教職員」ですが、選考会議メンバーは、教授と「学外有識者」が半々。


実に面白い(^^)

学外有識者のメンバーの見識に疑念がある、、、とは言わないが、少なくとも広義の日本の知性の最高峰が綺羅星の如くとは思わない。

それはさておき、学内のマジョリティな意見が学外から見れば、マイノリティに過ぎないという事実はかなり「重い」のかも。


歴代の名総長と言われれば、何人か名前は直ぐに頭に浮かぶのですが、何方も「危機的な事態の中で大学のアイデンティティを守り抜き、研究と教育の基盤を整備」された方のようです。


折角の「女性初」なんだから、、、以下略




2026年9月29日火曜日

橋姫伝説の和歌解説

 


後鳥羽院主催の歌会は、、、、無論捏造です。

掲示した和歌は全て本物でして、一首毎に批評はしませんが、当時の名歌人ばかりですから、出来映えはさすがさすが。


本歌のキーワード(宇治、橋姫、さむしろ、かたしく、ころも)のガラガラポンがコツだが、季節を変えたり、詠者の性を変えたりしなければならないとされる。

無論、キーワードだって全部を使ったりはしない


批評はしないと言いながらも、一言いってみたくなるような、、、


きりぎりす
鳴くや霜夜のさむしろに
衣かたしき ひとりかもねん(良経)

さむしろや
待つ夜の秋の風ふけて
月をかたしく 宇治の橋姫(定家)


橋姫のかたしき衣
さむしろに待つ夜むなしき
宇治のあけぼの(後鳥羽院)


良経のように「宇治の橋姫」を隠して仕舞えば本歌取とは気が付きにくいし、百人一首収録歌という事で目眩しにもなっています。この事は解説本には必ず触れているらしいが、アタシが読んだ本にはなかったから(ソリャ初心者向きだもの、大久保公園のTACHINBOの和歌のなんか引用する訳がない)初めて知りました。


定家、稀代の狂言綺語師の面目躍如。

奇抜すぎる表現がなんとも、。、ふけるのは風じゃなくて夜だし、かたしくのは月ではなくさむしろに決まっています。保守的な歌壇、とりわけ鴨長明の無名抄は非難轟々。あれは批評というよりオトコの嫉妬だ(^^)

歌人や歌学者という肩書の割に不遇だし、本職である神職は早々に馘首の憂き目


後鳥羽院はキーワードを全部使うという許しがたいマナー違反を平然と(^^)

主上は何をやっても許される時代でしたし、実に洗練された修辞と感心するしか無い。

和歌としての出来映えはさておき、言葉遊びの極致とはこういうもの。