2023年3月17日金曜日

李陵

 



何事にも「三」はすわりがいい。
ナンチャラの三傑ってよくあるはなし。

信長、秀吉、家康
蕭何、張良、韓信
西郷、桂、大久保

無理矢理揃えているきらいもあるが、揃うことでドラマになる。
坂の上の雲だって、好古、真之、子規と揃えたから重層的な視座の小説になり得た。
このあたりはストーリーテリングの基本的な技法に違いない。


名伯楽に恵まれなかった悲運の名馬、、、中島敦
アタシの頃にはなかったが、彼の山月記は国語教科書の定番。
かかるが故に、知名度抜群となったのは洛陽の紙価高からしめる至りだが、、、、口惜しくは代表作の一番手は山月記じゃないだろう.....が、ウィキではそうなっています。


李陵(中島敦晩年の傑作)


登場する主人公は、悲劇の武将である李陵

寡兵が故に異民族に敗退し捕虜となる事を余儀なくされたが、佞臣の讒言により冤罪で罪九族に及ぶ苛烈な処罰を受ける。

その不当性を直訴し武帝の不興を買い、宮刑の命令

しかしその屈辱にもめげずその生涯を人類の史官として全うした司馬遷

李陵と同じように長年拉致抑留されるが、望郷の念と漢帝国への節義を曲げず、四半世紀を経て帰国出来た蘇武。


タイプの違う三人の織りなす葛藤劇、、、、実に素晴らしい。

司馬遼太郎は司馬(遷)には遼(はる)かに及ば無いって意味のペンネームなんですが、中島敦が健康と伯楽に恵まれなかった事は「近代日本文学上の三大損失のひとつ」に違いない。

彼が長生きすれば、司馬遼太郎とはタイプの違う文学の巨塔になりえただろうに、、、、


李陵の朗読音源は2時間を超えますから、お手頃の方で代替します。

これも教科書に採用されるくらいだから名品にはちがいありません。



2023年3月16日木曜日

オスカーのオールタイムベスト

 



たわいないお遊びにしかすぎないが、これがまた楽しい。
アカデミー賞も、あとしばらくで「百回目」
当然ながら、事務方は考えている筈だが、、、、


作品賞のオールタイムベストの選出


ノミネート作品まで含めて候補リストにあげてもいいが、受賞作品だけにするのが穏当

最近の十年間程度は対象外にする方がいい(良いものとは風雪に耐えて、、、更にいうとオフィスボックスのパフォーマンスが良い事)

投票方法は会員全員によるランキング方式(上位三本程度を選ぶ)



とまあ、、、勢いよく書いて、自薦でもやるかと思った途端に面白くなくなった。

この手のランキングって、ケインズが言う美人コンテスト原理が働き面白い結果にならない。

やる前から、、、


風と共に去りぬ

カサブランカ

ゴッドファーザーⅡ

タイタニック


とかが選ばれるはずだし、、、、

つまり、皆んなが選びそうな作品に票が集まる

それにアタシが無人島にもっていきたい傑作っておよそアカデミー賞とは無縁なんだわ(^^)

2023年3月15日水曜日

政治というエンタメ

 



かつては

官僚OBの渡りの一種
労働貴族の論功業賞
政治家秘書あるいは田舎議員の坂の上の雲

が国会議員の代表的な種族
昨今のさばるのは、、、、

退役アスリート
売れなくなった芸能人
ユーチューバーみたいなよう分からんの



はやい話が「珍奇で面白い話題性なり知名度」だけが取り柄。
これが悪いとは言わない。かつてのようなステロタイプばかりよりも多様化される効用もあるし、政治家に必要な資質.....マックスウェーバーのような高尚にして抽象的な事は言わないが

国家安全保障を真剣に考える
経済をなおざりにしない
配分(富の)おろそかにしない

結果として民草のいのちと暮らしに向き合うことになりますからそれさえしてくれれば、過去は問わないし多少の不道徳だって許容する。だってたった3つだけですよ。逆にいうと、この三つに対する所信の表明のない候補者や政党は論外だということ。


しかしなあ.....

新人類国会議員は旧人類国会議員に比べて総体的にこれらの点でも劣位にあると思わざるを得ない。


いやしくも国政の担い手を「面白いからとか知名度が高いから」とかだけで選ぶべきではないが、主権者が選んでしまった以上致し方ない。そんな主権者にまで選挙権を与えたのは政治の責任に他ならない。

これではもう主権者の程度に合わせた制度設計を考えるしかないが、与えてしまった政治に修復能力があるかどうかってはなし


利益相反....英語略語では、COI

元来、高潔な倫理観の持主の集団に於いてはさほど考慮する事はなく、その集団の自治で集団の構成員の生殺与奪を委ねて来た、、、、がもはや理想は虚構となった。

(多分だが)医師会や弁護士会もかなり疑念をもって見ているが、最たるものが政治家集団。

選挙制度が個人の利得や政党の利権以外で決まる事はもはや信じ難い。

重複立候補制における比例復活なんか誰が考えてもおかしいが、辞めるって事に先ずならない。


いろんな斬新なアイデアは湯水の如く湧き出るし、政治が刷新される期待値には自信があるんだが、、、現実は絵に描いた米餅よりもリアルな稗粟のほうがまだましという諦め



2023年3月14日火曜日

エブエブ

 



如何なる愚作、珍作、怪作だろうが、皆さん粉骨砕身全身全霊を込めての成果物なんだから、外野がとやかく言うものではなく、、、まずは成果に賞賛と拍手.....だがなあ




多様性重視の現れ、、、なの?
「エブエブ」の圧勝
この作品の製作会社(A24)は、インディーズでいわゆるスタジオが創る映画とは一線を画し、アタシとしてはズバリハマるタイプと全く受けつけないのに二分される。
これは後者だと、、、キッパリ

この荒唐無稽なハチャメチャ感は生理的にあわない。一応シネコンの最大クラスのスクリーンで観ましたが、出来れば途中で帰りたかった。
なかには、時間を置くとジワジワと味わいを醸しだす作品も過去にはあったのだが、、、これはどうなんだろうなあ。

主演女優のミシェルヨーはアジア系。
中国系のようですが、国籍はマレーシアだそうです。香港映画で人気がでて、ハリウッドへ。
今や映画は多国籍化していますから、人種の括りのレッテルにはあまり意味がない、、、はずなんだが、レガシーなヒエラルヒーはいまだ強固なものがあるようだ。
でもインパクトのあるメガパンチ一発で崩れるような脆さもある。
だから七冠に輝いたのかな?


シカゴ
ミリオンダラーベイビー
シェイプオブウォーター
ノマドランド
コーダ
エブエブ

21世紀に入り、女性がセンターの作品賞の一覧ですが、それ以外にも非白人系まで含めれば、、、

パラサイト
グリーンブック
それでも夜は明ける


少し度が過ぎるようにも思えます。
つまり、映画なんて商業主義の権化。興収が最大の価値。
興収とは無関係に作品の価値云々は本来おかしいし、少なくとも風雪には耐えてくれませんと。
以前からも、身体障碍(アルコール依存症を含む)の役柄は俳優賞の近道と言われたが、、あまり好ましい事でもない。
マジョリティだとかマイノリティとかではなく、良い作品、歴史に残る作品が一番なのです。
この「エブエブ」は時分の花だと

掲載の諸作のなかでは、

ミリオンダラーベイビー
パラサイト
グリーンブック

は至極お好み

2023年3月13日月曜日

大江千里

 ネット検索だと、、、哀しいかな歌人ではなくミュージシャンがヒットする。

大層な歌人でもなく、生没年不詳の九世紀の下級貴族にすぎないからかなあ

正確には「ちさと」と読み、ミュージシャンの方は「せんり」、、、多少の皮肉を感じます



白楽天の漢詩の本歌取りのようなもの。彼は儒者ですからかような作品がそこそこあるらしい。

十一世紀になり、源氏物語花宴巻にこの歌が登場するが「似るものぞなき」とレディムラサキは手を入れます。漢臭を嫌い和風文化的に改めたって識者は仰います。


霞がかったような春の月を素材にする先行和歌はないではないが「朧月夜」なる表現は大江千里が嚆矢のはずだ。そして源氏にも皇太子の婚約者なのにヒカルくんの愛人になる二股愛の御令嬢さまが「朧月夜尚侍」

かなり高名な和歌だったと思いますが、勅撰集に選ばれたのは、やっと十三世紀初頭の新古今和歌集。


なんにしてもこりに凝った王朝美學の一例。

夕暮れは秋より春だとか、月ははっきりクッキリよりもボンヤリが一番、、、かなり屈曲しているかも、、いやいや耽美的官能的だというべきだ。

本歌取りしてるなあ、、、って和歌は散見されますが、ズバリ「朧月夜」の字句は見た事がない。

秀句表現すぎて歌学では禁句の扱いだったのかもしれませんが、御子左家編纂の「禁制詞」にはなかった、、、と思います。


そのような呪縛から解放された明治の頃の文部省唱歌



ズバリ「朧月夜」

作詞は、教育県が生み出した高野辰之博士

昨今は文部省唱歌なんか馬鹿にされ、、、しかし、センスあるミュージシャンはアルバムでカバー曲として好んで取り上げています。



アタシは、彼のカバーがいちばん好きです



2023年3月11日土曜日

WBC

 




日本人って......ありていに言えば、日の丸と君が代に「誇り」をもつ、、、とまで言わなくても否定的な感情とは無縁であるということだとしよう。
日本国の国籍の有無は問わない。
つまり近代的な国家観を超克したもので、仮にも国籍を有しながらも非国民や売国奴と言われる輩は「日本人」の範疇に入れるべきではない。


しかしながら頑固なまでにIOCは「国籍主義」を堅持する19世紀的な存在だから、政治との距離感がおかしくなるのも同然




一方でラグビーは「協会主義」

個々のラグビー協会が、協会員だと認めればWCRに出場が出来る。協会員になるには国籍要件以外に居住地要件を満たせば済む話だし、歴史的経緯もあり「北アイルランド人はアイルランドラグビー協会に所属する(^^)


さてさて、かくも盛り上がるとは予想外のWBC

メジャーリーガーの参戦効果もあるのだが「日系」選手の参加も、、、なかなか好評だし、聞く限りの振る舞いは「日本人」に相応しい。

何故ヌードバー選手が侍ジャパンなんだ?って誰も解説してくれないから、調べるにこういう事らしい



なんとも融通無視な(^^)

理屈だけ言えば、複数のチームに参加可能であり、後は本人の選択次第ってことか?


母が中華国籍

父がアメリカとコリアの多重国籍

本人は日本で出生


チームが必要とすればどこのチームからも参戦できます❣️

これが21世紀のグローバリズムということ?

高師直

 江戸前歌舞伎の時代ものが室町時代に化体した事は有名なんだが、今や徳川幕府に忖度もないから、ストレートに(^^)

しかし、化体のやり方がなかなか秀逸なんだから、初演通りやっても面白いが、、、

浅野内匠頭が塩谷判官
-赤穂藩は良質のブランド「塩」で有名。
吉良上野介が高師直
-三河辺りの足利家の流れを汲むセレモニー担当である「高」家筆頭の吉良家はブランド力でどうしても塩生産で浅野には勝てず、恨み骨髄

人妻キラーの師直は塩谷判官夫人の顔世御前に懸想するが歯牙にもかからないって、塩の恨みが邪恋にすり替えられる。

塩谷判官を冤罪で惨殺するが、顔世御前も夫と生死を共にし、想いは果たせない....

以降は史実とは無関係に主君の仇討ちばなしとして展開する。


現実は専横を極める高師直は、太平記最大のアンチヒーローなんですが、実際は事務処理能力の高いリアリストで軍事にも長けている。

吉良上野介にしても三河辺りでは明君と言われていて、昔は忠臣蔵なんか舞台でも映画でも上演すら出来なかったらしい。

ただ「実るほど首をたれる、、、」という謙虚さにかけ足利一門というだけで余りにも権力を持ち過ぎて、尊氏の弟の直義や尊氏の私生児の直冬との確執から観応の擾乱を引き起こし、末路哀れとなってしまったところは同じ。

このあたりの寝返り裏切り、、、敵の敵は味方みたいななんでもありで道義や仁義とは無縁の世界である。尊氏以外は共倒れとなり、首尾よく義詮に跡目相続がかない、尊氏直系の統治体制が確立したって事でした。

尊氏さんは太平記の世界では偉いのか単なる祭りの神輿かよくわからないのですが、本性はかなり凄みのある人物だったのだろう



2023年3月10日金曜日

蒟蒻芋

 



蒟蒻に高関税がかけられていることは承知のこととなっている。
しかしながら、その背景が政治の力だとか不確かな税率数値とか誤謬を撒き散らかして人心を惑わす輩が
あとをたたない。
そもそも、蒟蒻製品の税率は大したことがない。
蒟蒻芋が高関税率なのである。
仕組み的には暫定的な関税割当制度等を根拠としますから一律の税率を述べる事は難しい。
実際は品質が保証された蒟蒻の確保は微かな可能性だけを言えば「国家安全保障上の要請」なのです。


かのWWⅡに於いて、アメリカを震撼させた「風船爆弾」とは蒟蒻紙風船爆弾であり、世界最初の大陸弾道弾だった。
五層の和紙を蒟蒻で接着させ、表面には苛性ソーダを塗布。約30キロの焼夷弾を高度一万メーターまで浮翔、あとはジェット気流まかせで、一万個くらいを打ち上げた。
一割程度がアメリカ本土に到達したと言われますが、
さほどの戦略的にも戦術的にも効果はなかった。

女学校の乙女の手づくりで、千葉や茨城あたりの海岸から飛ばしたらしく、どっかに記念碑があった筈だ。


かの将軍様も国民を飢餓状態に追いやるまで費用を
かけなくても...アメリカまで飛ばすことなんか安上がりに、そして効果的に出来るんですよ。


以下の発言は真意ではない事をお断りの上...

山火事なんて手緩い事を言わずに、731部隊の成果が本当にあったのならば、生物化学兵器にすれば遥かに効果が高かった。
炭疽菌、ペスト、チフス、コレラ...
少なくともアメリカンに対する心理的な脅威や恐怖は筆舌に尽くしがたい。

党員作家であるらしい森村某の、なんとかの飽食って「反」日新聞の南京事件並みの虚構である。
一端の事実があろうと白髪三千丈化すれば、それは虚妄とよんでも差し支えない。
虚妄でなく事実ならば国際法遵守意思かなんか皆無の当時の狂信的な軍部(開戦の詔勅から国際法遵守の一言を御上のご意思に反して削除したのは東條だった)のことだから、絶対に風船にぶら下げたと思いますよ。
このプロジェクトの責任者は常識ある理科系軍人だったようですが、上意には逆らえない。

もっともそのようなアタックの恐怖から無警告原爆攻撃に踏み切ったという、、、原爆投下性善論を唱える学者もいるらしい。


さて、中共の偵察気球。

可能性だけを言えば生物化学兵器であってもおかしくないが、北鮮と違いそこまで非常識ではなかろう。

しかし「安全保障上の脅威」ではないと国会答弁は、答弁者である大臣も原稿を書いた事務方も非常識の極みだったと言うこと、、、かな?


某情報誌によれば中南海中枢は詳しくは知らなかったがホワイトハウスは当初から把握しており、打ち上げから位置情報を把握、適当な場所で涎が出そうな通信情報を大量に入手させる(無論ガセネタ)

ジョンルカレの描くエスピオナージュの世界そのものです。

偽情報に翻弄される人民解放軍を遠見にほくそ笑んでいたんだろうなあ(^^)

今回撃墜なんかしたくなかったが、市民とメディアが騒ぐから.....已む無くオペレーションを断念したって事が深層(^^)


という事で、あの外務大臣の答弁ですが、アメリカと示し合わせた偽答弁かもって気がする。

本来は許されない事だが、敵を欺すにはまず身内から、、、ともいう。

これが真相ならば、アホ馬鹿呼ばわりした方々は、我が身を恥じ入れ🤭



2023年3月9日木曜日

春霖

 



素直に、春の長雨とか菜種梅雨と書けばいいのに(^^)

しかし、その鬱陶しさを突き抜けた爽快な気分を七言の詞章で表現する以上散文的ではあるべきではない。


雨過天青雲破處

五代の時代の後周皇帝世宗の厳命の一部の表現を由来とする、、、、はずなんだが、間違いかなあ?

ネット事典的には、雨降って地固まると類似語だとされています。

想像するに、天青が天晴に誤植され、また混同されたんだろう


雨上がりの雲間からの蒼天の色を陶器に写し出せ!
なんとも無理難題ですが、陶工たちの辛苦は、北宋汝窯(河南省)において実現した。
窯変・・・曜変だとか油滴だとか禍々しい偶然の色調を有難がっているうちはまだ本当の陶器を知らないのだ!と言いたげか、曰く「神品至宝」
陶器の色彩は、この雨過天青なる青磁を随一とする・・・・と極私的には思い込む。
ともあれ味わい深く同じ青でもチンホア(染付)はあまりお好みじゃないもんで・・・



大阪市立東洋陶器美術館で台灣國國立故宮博物院の所蔵品が公開された際のプロモーションビデオ


実に素晴らしい。

皇位の正統性は三種の神器の所有にあるならば、中華帝国の正統な継承は「白菜、豚角煮、青磁の猫の餌入れ」にかかっている。


たかが脆弱な地方王権であっても、南朝が正統とはそういうことなのよ。




見様によっては凡庸とも思えるあまりスッキリしない蒼天の色彩
でも、美を極めるとこれが一番素晴らしいと思えてくるのでしょう。
朝鮮青磁に比べ、青味が薄灰青。
何時迄も眺めていても煩くない。

この「水仙盆」
何に使ったのか?
用途は不明というのが通説ですが、ペットの餌入れだと(^^)


話戻して「神品至宝」
和訳すれば人類史上最高の焼き物という事ですが・・

確かに一点の瑕疵もない完全無欠で「無紋」と称しますが、類似品はいくつかありますが、、、お話にならない。



ともあれ、台灣有事の際には、倭國が責任をもってお預かりする用意がありますが、、、