2020年5月31日日曜日

それからのシェイクスピア



最晩年の作品である「ヘンリー八世」
初演時には、All is true
なんだか含蓄ありげで、そのままこの映画のタイトルになった。

ロンドンで成功をおさめたシェイクスピアは、
ヘンリー八世上演時の不慮の火災でグローブ座は全焼
止む無く故郷に帰ってからの家族の物語。


アタシが貪り読んでた時代は別人説が結構勢いがありましたが、
いまや似非文学史のたぐい。
一部に合作があっても、劇作家としての盛名を疑うものはいない。
著作権云々のない時代。
他人のモチーフや台詞を相当に転用したらしいが、
名台詞として今に語られるのは作品自体が素晴らしいから...
映画の名台詞ランキング上位も、尽く傑作映画の台詞ばかりのと同じ事。
忘れられた原作者も、語られる事なく文芸史に名をとどめたのですよ。
しかし...歌舞伎や文楽の名台詞は、美文調は同じでも決めセリフなんですが、
シェイクスピアは、人間と人生を慨嘆します。
同時代の大衆演劇には変わりがないが、この違いはなんだろう。


シェイクスピアは映画の素材の宝庫
手を替え品を替え...

原作に忠実な正統派
大胆な意訳
換骨奪胎翻案
スピンオフ版

しかし、シェイクスピア自体が登場する作品は少ない。
若かりし頃ならば、

恋に落ちたシェイクスピア


鉄板素材のバックステージものでもあり、名作の誉れも高い。
そして、晩年を描くのが、この「シェイクスピアの庭」
どちらちも、大女優のジュディ様が登場あらせられます。

2020年5月30日土曜日

改めて「21世紀の資本」


全世界で三百万部は売れたそうです。
下衆な事ですが、印税も相当に入ってきたのでしょうがさて置き...
彼の仮説の適否を論証するだけの知見はないが、
大きな視座からして、そんなんだろうなあ...ってシンパシーなくしては
あれほど売れなかっただろうから、相応の真理が含まれているはずだ。

それにしても経済書の映画化なんて空前絶後。
なにはともあれ、知の探求のためだ!
他府県をまたがる往来ではあるが、三蔵法師の故事を習い
禁を冒してまでも、天竺に真理を学びたことを想起せよ
朝に道を聴き夕べに死すとも....


先ずもって、ピケティ先生は何を論じたのか?

資本主義の目指すものは資本の効率的な配分であり
公平な配分ではない。
結果として生じる富の不均衡は「富の再分配」でのみ
解決することができる。
資本主義をリフォームしなければ、
資本主義の背骨(民主主義の背骨でもある)中産階級そのものが瓦解する。

(以下は解説版の孫引き)
議論の出発点となるのは、資本収益率(R)と経済成長率(G)の関係式である。
Rは、利潤、配当金、利息、貸出料などのように、
資本から入ってくる収入のことである。
そして、Gとは、給与所得などによって求められる。
....Rは平均で年に5%程度であるが、
Gは1から2%の範囲で収まっていることが明らか...
このことから、経済的不平等が増していく基本的な力は、

資本収益率>経済成長率

という不等式にまとめることができる。
すなわち、資産によって得られる富の方が、
労働によって得られる富よりも速く蓄積されやすいため、
資産金額で見たときに一握りの上位者が
より裕福になりやすく、格差はより拡大...

補足
税制は国により異なるので、ピケティ先生は論じなかったが、
倭国の有価証券税制(分配金や売買益)では、
単一税率であるため、富裕層に有利になっており、
全体として負担税率は富めば富むほど低くなる...
累進課税とは「経済成長率収益..給与」の世界だけの話


彼の著作には鬱陶しい数式がなく、
可視化された統計値と当時の経済事情を背景とする名作文学で
構成されている。
それが、その映画化映像の切り張りや、理より情に訴える
画面がより事態をセンセーショナルに構成する
まるで...サンダース上院議員のプロモーションビデオ。
あるいは、山本太郎かな?


そもそもこの経済書がこの分野での実績に乏しい
シロ難解と畏怖されるみすず書房から刊行された事が不思議な
出来事。
今回の本邦上映権も...と言いたいが、
内容的にシロ難解があつかうようなレベルじゃない
しかし、竹書房があつかうとは...そこまで
酷い代物じゃないし、マイケルムーアよりははるかに品位がある。

オリジナルを精読した方には勧めないが、
それなりのドキュメンタリーであることには間違いない。
読んだがもう忘れた方には...映画館に足運んでも良いが、
この駄日記読むだけで充分

2020年5月29日金曜日

Who Says Elephants Can't Dance ?



あちこちで小屋のリオープン❣️
実に嬉しいが、大型シネコンチェーンの雄が何というテイタラクだ。
今日からの番組がリンク画像の通り。
スクリーン数が12
上映作品が20くらい...なんたる事か、懐かしい映像と
最近作の再上映ばかり。

再開した小料理屋さんが冷凍の温め直しばかりを客に出せば
何が起きるか痴愚魯鈍でも分かります。
小規模なシネコンでは、ちゃんとクビを長くして待っていた
新作がかかっています。
あのピケティ先生の「21世紀の資本」だって...


今日のお題は知る人は知っている業界噺
業態転換に遅れた瀕死のコンピュータの巨人を
アフターライザップした伝説のCEOの著作名
図体がデカくても俊敏になれるんだ!って暗喩
邦訳の際は「巨象もまた踊る」だったと思うが記憶が曖昧。
でも、彼の退任後はやっぱりビフォーライザップ。


やっぱり巨象は軽やかに踊れない(^.^)
まあ事情は想像出来ますので、
懐かしの名作の一挙上映は咎めないが、新作を暫く
かけるつもりはないって、あまりに観客を馬鹿にしているし、
動きのトロい鈍重な恐竜なみだわ。

もしかしてクラスターなり夏場早々に第二波来襲を
予想しているのかも...
ならば、それも見識かな?


因みに、ウェルチ退任後のGMは、ダウ銘柄から外される程の
凋落ですが「巨象」はまだしがみついています。

2020年5月28日木曜日

カールヤスパースのジャンケン...鳥錬磨



鳥錬磨...なんて偶々の変換ミスです。
カタカナで正しく書けば、トリレンマ(みすくみ)

ヤスパース(だと思うが)に曰く

知的でナチス的であれば、誠実ではない
誠実でナチス的であれば、知的ではない
知的で誠実であれば、ナチス的ではない

なかなか便利な警句であり「ナチス的」の部分やらを
何かに差し替えれば、なんであれそれらしく聞こえて来る。


先日に読んだある論文...

国際政治経済のトリレンマなるものがあり
国家主権・民主主義・グローバリゼ-ションの三つの政策目標・統治形態のうち
すべてを達成することはできないというもの。
ハーバード大学ケネディ行政大学院教授であるダニ・ロドリックが提唱した。

一見もっともらしいが、これではジャンケンにはならない。
民主的だろうが、専制独裁的だろうが、グローバリゼーションは成り立つし、
現に成り立っている。
しかし、国家主権と民主主義が成立すれば、グローバリゼーションは
成り立たない...が判らない。
そもそも国家主権と民主主義が両立するのかしら?


アタシの理解が浅いのか、誤解している可能性がないとは
言わないが、安易な警句の剽窃でしかない。
アタシとしては、平明に「ナチス的」なる部分に
田布施の不忠の⚫️とか習⚫️平をいれて、
悦にいることにする。

2020年5月27日水曜日

余生に「コーラン」を読む



御贔屓のリアル大型書肆が再開したもんで、
祝儀替わりに購ったのが間違いの元かも...
文庫本三冊の分量はちと重い。
巣籠もりから近々解放されたら、小屋に舞台にコンサートホールと
忙しいのに
しかし、三大世界宗教の教典を読んでもいないんじゃ、
あの世で肩身が狭い(^.^)

あれこれ悩んだ末に、岩波文庫版にしました。
理由は簡単で...

クルアーン
ムハンマド
アッラーフ

なんて今風の表現に馴染めないもんで、
井筒俊彦氏の昔ながらの表記が落ち着くし、
多少乱暴風ながら平明な口語訳だ。
しかしなあ...
最初から、ALM に躓く。
アリフ・ラーム・ミームなる神秘的な真言
般若心経でいうところの

羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶

みたいなものかしら?
コーラン学者もサジを投げているらしい。
そもそも「呪文」に意味はない。
なんかよく知らないが絶大な効能があると信じる事だけに意味がある。
あえて意味説明をすれば..「神さまだけが知っている言葉」ってのが正解❣️


井筒訳も、原典がそうなってるからだろうが、
耳慣れない固有名詞の山で往生します。
初出の際には、注記がありますが、ちゃんと記憶しておかないと
先々で意味不明になる。

例えば...以下読書人の空想能力を問う問題
一体誰のことだ?

ムーサー
ヌーハ
マリアム
イーサー
ジブリール
ミーカール
スレイマーン
イブラヒーム
シャイターン


正解は...しかるべき時に



2020年5月26日火曜日

組織は合理的に不合理を行なう(2)




東映仁侠映画の最高峰と言うと「博奕打ちシリーズ 総長賭博」
かの三島由紀夫がギリシア悲劇になぞらえて大絶賛
此れがきっかけで、三島と主演の鶴田浩二は親交を深め
昭和維新を誓い合った...というウワサ。
毎度の狂言綺語の書き出し(^.^)

良かれと思ってやった事が次々と裏目にでるカタストロフ
よくは知らないがギリシア悲劇とはそういうものらしい。
少しアカデミックに言えば...

不条理...つまり合理的な判断が不合理な結果を生む

ということ
神ならぬヒトザルは完全合理的な存在ではないから、
合理的と勝手に思った...が正確な表現
不合理な結果には様々な類型があると著者はいいます。

全体合理性と部分合理性の乖離
正当性(倫理性)と効率性との衝突
長期的帰結と短期的帰結の不一致


この手の話は日本軍の特徴でもなくて、
現代の企業によく見られることばかりで...悲しくなるねえ
あんだけ日本軍の批判的分析本があり、
よく売れているのに、本当に歴史から学べていない...
それも当たり前のはなしで、元来完全合理的な思考が出来ないんだから
結果が不合理に終わるのは当然かもしれない。

慨歎はさておき...
従い、完全合理的な存在でないヒトザルの思考とは
合理的だという前提にたって、結果が不合理だと言うことは
正しいのかしら?
繰り返せば、合理的の錯覚のように思える。

十万の英霊、二十億の国帑

日本軍はこの呪縛の中でしか思考できなかったんじゃないのか
日清日露以来、大陸での多大な犠牲の上に
今の帝国なり皇軍があり、後退や妥協はその犠牲に申し訳ない...
って分かり易い大衆受けする素朴な議論
しかし経済性評価からすれば「その犠牲」は埋没原価です。
つまり済んだ話
今更何やろうと返ってくるものでは無いから、
コスト・ベネフィットの比較計算に算入すべきものでは無い。
この程度は浅学菲才のアタシでも知っている。

まあこんな事を冷ややかにに口にすれば、
当時はもとより今だって危なくて夜道は歩けないけど..

2020年5月25日月曜日

最後の証人





読書三昧とは言え、たまにはリーガルミステリーだって読みます。
文才は顔かたちとは無関係だが、
どうせなら、美人作家(閨秀作家)がいい(^.^)

刑事裁判ミステリーです。
スリル、サスペンス、ホラーじゃなくて、ミステリーですから、
緊張感、不安感、恐怖心ではなくて、謎解き...なんだが
なんだね!この作り方は

粗筋は、リンク映像の通りなんですが、舞台は米崎地裁
地検と同じで宇都宮ではなく前橋(米崎)にあります。
被告代理人は米崎地検の元検事
退官した理由は...今の検察庁ならばこの程度で辞めれば、
検事は誰もいなくなる。
彼の事務所は中野にある。
東京の弁護士が地方都市の有罪が確定的な殺人事件を請け負いますかねえ
依頼人は裕福みたいですから、
セイギはカネになると...考えるような主人公ではない。

現場は男女の密会現場らしいホテルの一室
凶器はディナーナイフ

しかしなあ...なんだね!この作りは
文庫本で三百ページくらいの短めの長編ですが、
被告人の名前がやっと明記されるのは二百ページを超えたあたり

あれれ...オトコが被害者じゃなかったの?
オトコが被告ならば、オンナが殺されたのか
なんというドンデン返し!

この辺りから、スリルサスペンス小説に変貌します。
しかし、佐方貞人弁護士は依頼人の利益の為に弁護士活動を
したことになるのかなあ
地方名士の被告人が七年前に被害者の息子を轢き殺したが、
警察に圧力をかけて危険運転致死事件を
揉み消した事実を明らかにすることで殺人罪としては無罪を
勝ち取ったが、過去の事件で訴追されることは
明らか...

被害者夫婦は自裁を殺人に偽装して復讐を計画したが、
佐方弁護士の慧眼の前に破綻
しかし、地方名士の過去の悪行が暴かれたことにより、
痴情の果ての殺人罪以上の社会的制裁を受ける羽目になり
復讐自体は成功する事になる...


素晴らしいつくりだわ!
テレビドラマになった、あるいはなる予定、もしくは
製作中らしい
主人公は、なりふり構わないスタイルなんですが、
映像化されたら、海外ドラマのSUITみたいな
スタイリッシュに登場するんだろうなあ

2020年5月24日日曜日

江戸単身赴任の下流サラリーマン日記



まだ図書館が開かないし、文庫本を拾い読む。

幕末単身赴任下級武士の食日記

本当にちくま文庫は玉石混交だが、
著者の経歴が面白くてよみはじめたが、経歴ほどのことはない。
赤坂の虎屋は、禁裏御用の歴史ある和菓子屋
江戸時代からの和菓子の資料を大量にお持ちだそうで
その整理のための組織がある。
著者は、その虎屋文庫の研究主幹だったよし


倭の文学は日記に如かず...とはドナルドキーン先生の言
王朝はもとより、江戸期ともなれば、誰しもが日記をしたためる。

若い紀州藩士酒井伴四郎は、万延元年に江戸勤務の辞令がでた。
単身赴任で、中屋敷の長屋に住まいする事となった。
当時から大都会であった江戸だが、百万人口のうち半分は武士。
直参旗本御家人合わせて二万数千人
旗本八万騎なんて虚構に過ぎず、戊辰戦争で戦わずして...
ではなく戦闘能力自体がなかったの。
つまり、大半が田舎侍で、多くは独り者や単身赴任。

江戸の経済は無為徒食の武家の個人消費と
その個人消費を支える農工商の剰余価値で成り立っていた。
気取らずに言えば、食欲と性欲の経済である。

キーン氏が言うように日記はプライベートなものであり、
公開を前提としないはずなのに、何故か不特定多数の目に
ふれるようになっている。
酒井伴四郎の食日記もまた然りで、キワドイ話は皆無に近く
専ら食い物三昧。
日記そのものよりも克明な現金出納簿が面白い

彼の江戸勤務手当は年間39両と現物支給の白米
現代の貨幣価値換算だと、
一文が20円
6400文が一両に相当しますから、まあまあの収入です。
支給米が余れば換金もできたようです。
自炊と節約...そのくせお稽古事や外食に散財しながら
かなり溜め込んでいたみたいだし...
もっとも、紀州の妻娘の生活費はどうなっていたのかとか
細部は判らない。
赴任費用は自腹みたいですが、
社宅費負担なんかどうなっていたんだろう。
少なくとも仕事に精出しているようには見えない。
仕事といっても、着付け師範代

実に羨ましい

2020年5月23日土曜日

ポスト・パンデミック


感染の世界史を読めば、当たり前だが、歴史を動かしたのはパンデミックだと断じている。
歴史は複合的な要因で変化するものだから、
あるエレメントだけに還元するのは正鵠を得ているとは言い難いのではないか?

しかし、西洋の人口が半減に近くなる迄の災厄をもたらした黒死病は、
掛け値なしに近世の扉を開き、ルネサンスと宗教改革をもたらした。
あの「スペイン」風邪(パンデミック1918)だって
現代史の二大災厄(ワイマール体制とロシア革命)誘因の大きな要素と言えなくもない。

今回の李文亮氏病が過去のパンデミックに相当するような災厄か
どうかはまだなんとも言えない。


誤解を恐れずに言えば、死亡者の数(認知数)はパンデミック1918の僅か1%。
しかし、WW1中の戦時景気で経済的なダメージは限定的であったものの、
戦後の反動が世界恐慌の遠因ならば、今回もかなり悲惨なことになるのかも...


そんなシリアスな状況のなかで「ニューライフスタイルのすすめ」とは
なんとも長閑な風景である。
いつ緊急事態宣言が解除されるかの一喜一憂も愚かしい。
小役人ならば、この程度でも致し方ないが、
統治者のやるべきことは他にある。
今、国際外交論のキーワードは、Gゼロ無極化時代
これからの国のかたちの再設計を多角的に有識者(私益や利権に無関心な碩学や知識人等)を
集めて議論・提言をして貰うべきではないのか?
仮にも命名するならば「日本再々洗濯会議」


百五十年前、土佐脱藩郷士の姉宛の手紙に曰く...

二三家の大名とやくそくをかたくし、同志をつのり、
朝廷より先ヅ神州をたもつの大本をたて、
夫より江戸の同志はたもと大名其余段々と心を合セ、
右申所の姦吏を一事に軍いたし打殺、
日本を今一度せんたくいたし申候....


現象面だけ見ても駄目さ加減は結構見えてきた。

田布施の不忠の晋だって、同じ官庁から二度首吊りの足を
引っ張られて黙っている訳がなかろう
テレワークの勧めなんて言ってはいるが、
オンライン授業環境にない教育現場となんら変わらない
企業現場だとまだ自覚しないのかね
グローバルエコノミーの脆弱性には何度も痛い目にあっているが...
如何にも組織は合理的に考えて不合理なことをやるものだ。


実際のところ、喉元過ぎれば熱さも忘れる健忘症が国民病
仮にもこの程度で災厄が終息するならば、
当然にツケはあとから回ってきます。
本当は「幸な結果」なのかどうかは...未来が見えないものには判らない