2016年5月27日金曜日

フランス組曲



彼女、イレーヌはロシア系亡命ユダヤ人。
若くしてフランスで作家として成功、結婚もし、二人の娘にも恵まれたが、
戦争にともない、田舎に疎開し隠れ住むが・・・
ナチスの手からは逃れ得ず、42年に夫ともどもアウシュビッツで死去。
ようやく逃げおおせた娘たちと母の形見の一個のトランク。
60年が経過し、トランクの中の遺稿は、密やかに書き溜めた小説「フランス組曲」であることが判明、直ちに出版され、映画化。


波瀾万丈なベストセラー物語なんです・・・というか、ベストセラーには、数奇な物語が付き物です。
映画版しか知りませんが、占領下のフランスで起きた日常的なエピソードが淡々と書き綴られる。
フランス人はみんなレジスタンスの闘士でもなく、隠しておきたいような毎日の出来事

村の平穏のみを願う村長
ドイツ軍の敵意を隠さない農夫
不穏な村人を占領軍にちくる協力者
ドイツ兵との情事にふける若い女性
人妻への欲望を隠さないゲスな将校
身を潜めるように隠れ住むユダヤ人親子
許しがたい日常を認めようとしない貴族の貴婦人
鬱々としながら、出征した夫の帰りを待つ人妻

・・・とまあ、思い入れたっぷりに書き始めたのですが、つまらない事に足を取られてしまった(笑)


いったい「著作権」はどうなっているんだ?

作者がこの小説を書いたのが40年から42年ごろ
作者は42年に死亡
小説が出版(公表)されたのが2002年
映画化されたのが2012年

誰が権利者か紛糾する場合はありますが、映画版は単純で「公表後70年」。
問題は、小説。
作者の「死後50年」が期限じゃなかったっけ?
さすれば、この原作はパブリックユースのはずだが・・・・
しかし、調べるにフランス法では、小説の著作権は「死後70年」だった。

著作権の期間は、長期化の流れの方向にある。
牽引するのが、映画。
国策産業を保護したいという国家(アメリカ政府)の後押しがあり、それにつれて全体が長くなる。
長短には一長一短があり、なんとも言えないし、本当に印税を取り、それを原資に末永く保護したいと思うような人類遺産の著作権には
関係のないはなしなのです。
日本でも、小説家さんたちは声をそろえて70年化を主張しますが、どうも「欲目」ですねえ。


ドイツ占領下でのフランスの風景は視点をさまざまに変えつつ、手を変え品を変えって感じでですが、このしつこさ。
いまだに芸術のモチーフとして風化しないっていうかさせないという強い思い入れ。
全土全員がレジスタンスとして戦ったなんて歴史の虚構をことあげするような馬鹿な真似をしないのが天才民族たる所以
負のエピソードを踏まえつつも「歴史というか事実」は絶対に忘れない。

なかなかよくできた映画です。
監督の腕よりも、原作の良さって気がします。
実のところ「フランス組曲」なんていうから、バッハの物語かしらって錯覚したワタシが馬鹿だった(笑)
主人公の人妻の自宅に下宿した紳士的なドイツ軍将校が立ち去る際に(万感の思いで)書き残したピアノ曲のタイトルでした。
舞台は、ノルマンディーあたりの小さな村落。
作者も、このあたりに疎開していたようです。



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