2017年10月9日月曜日
泥の河 再見
あの映画観るとこの演歌が耳奥に響く。
挿入歌でもなければ舞台背景に共通点がある訳でもない。
なんだか勝手にあの時代の心象風景が重なるのです。
大衆的知名度だけ言えば辺境のマイナー作品
偶然が重ならなければ埋れ木のまま朽ち果てたに違いない。
幸いにして映画遺産として後世に残った事を嘉しなければならない。
オールタイムベストなんてどんな選び方をしても批判される。
定番(黒澤、小津、成瀬、木下、溝口、深作)作品なんかは不動の指定席ですから
斬新なスタイルになるはずがない。
誰もが知っている(観たことはなくても)作品ばかりが並ぶが、
その中のキラリと光る珠玉の逸品を選んでこそプロ映画鑑賞家というもの。
81年の映画賞総ナメはまあいいとしても、オスカー外国語映画賞のファイナリストって
あの時期凄い事なのです(その後20年あまり日本映画は世界から忘れられた)
ちなみに某映画雑誌のオールタームベストだと13位(これは凄いことで選者はその見識を誇ればいい)
監督の小栗康平さんは極度に寡作なのですが、
処女作のこの作品「泥の河」以外は私映画的で実のところお好みではない。
久方ぶりで小屋にかかりましたから、おっとり刀で(^^)
馬齢を重ねれば印象感想も変わるかも.....
舞台は大阪、土佐堀あるいは安治川口界隈
町工場や倉庫が並ぶ防潮壁に囲まれた灰色の世界
時代は1956年の夏、天神祭の頃
もはや戦後でなくなり神武景気に世間は浮かれ、売春防止法が公布の年
橋のたもとの食堂の少年と宿舟(実は廓船)の姉弟が主人公...なんですが、
本当は復興ジャパンの光を浴びる事のない生きている事が辛くなるような
事柄自体にフォーカスがあたる。
ちなみに少年は9歳、姉は3つ上。
原作は宮本輝さんの名作小説
名作小説を更に越えた秀作映画だそうですが、小説は未見なので
この辺りはパスします。
ちくま文庫には、川三部作(後は、螢川、道頓堀川)として1分冊になってます。
当時の惹句に曰く
あの時少年時代は終わった
哀しみの源流に遡れ
チョットうろ覚え(だって三十年前の事ですから)
と同時に鮮明に思い出した事は「ガキがセンターを張る映画は観ない!」は
ここに始まったのだ。
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