2015年11月12日木曜日

惹句師




一体どう読むんだ?
ジャックシ・・・つまり、キャッチコピーライターってことですが、特の映画の宣言文句
ポスターなんかに目立つように描かれます。

映画は優れて資本主義的な芸術であり、いくら傑作でもコケればなにもならない。
リピーターに支えられるものでなく、まずはイメージだけで客を呼び込み、あとは、口コミ人気。
セールストークだけで売れるものではないが、とにかく宣伝大事。
芸術としての文化的洗練度に遅れを取る邦画の世界でも、この分野だけは命がけ


この世界も、言語表現としての時代変化があり、最近は寸鉄人を刺すようなズバリひと言系が
隆盛を極めるが、かつてのプログラムピクチャー全盛期は・・・こんな感じです。


女を捨てるか 命をやるか 
振ったダイスに聞いてみろ 
望郷の唄に賭ける男の勝負


歌と喧嘩は江戸の華
暴れるムードはボサノバタッチ
イキでモダンな現代次郎長、歌とパンチで大暴れ


キャッチコピーっていうより、拍子木を叩く講釈師ないしは香具師の口上です。
コンテンツに相応しいといえば、けだしその通り。


しかし、最近の傾向は・・・


宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない(エイリアン)

決して一人では見ないでください(サスペリア)

叫びだしたら、止まらない(スクリーム)


包装紙だけで売れるものではないし、最後は作品そのものであることは言うまでもないが
多くは「一時の陶酔と慰安の道具」の使いすて


ところで、1953年公開のOZUの「東京物語」
世界中の名画ランキングで必ず上位を占める邦画の金字塔ですが、公開時の惹句にいわく


鬱然として豊潤な傑作


こんな惹句で映画館に足を運ぼうと思ったのかどうか・・・
ちなみに興行収入は1億3千万円(この当時は配給ベースですので興行収入ベースだと倍になります)
この年のトップは「君の名は」で2億円強。
一億円を超えないとベストテンには入れませんが、忘れ去られた多くの映画のなかでの第八位。

ちなみに、この年の国家公務員の初任給は7650円
映画館の平均入場料が60円程度
物価はざっと20倍に上がっています。

一方で娯楽の王様だった映画産業の規模(入場者数)は現在の10倍程度だったことを思えば・・・
大傑作にしては、教養あふれるキャッチコピーの甲斐なく、そこそこのアタリにとどまったようです。




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