2016年1月20日水曜日

源氏みざるは・・・遺恨のこと



俊成をしてかくも喝破せしめたことに比する文芸はほかにあらず・・・
もっとも、源氏の影響下に非ざる文芸もどきが横行する末世の文壇ですから、いまさら「遺恨」もへったくれもない。
源氏物語を読んだこともなく(まさか聞いたこともない・・・はないと思うが)とも芥川賞や直木賞はゲットできるが、
その程度の賞作家だろうと思っている。

いったい何がすごいのか?
無人島に持ってゆくなら、この小説に如かずって思うのですが、上記の賞作家はどうなんでしょうか?
まあ、時間だけはたっぷりあるので「大部」にこしたことはない。
しかし、分厚ければなんでもいいってわけじゃなく、構成するエレメントの華麗さや荘重さがものをいう。

あれだけの長編小説をたった一人のプレーボーイをセンターにすえてもつわけがない
ストーリーテラーの巧みさは「複眼視座からの展開」による。
ある意味で、ヒカル源氏は狂言回しであって、ヒロインが主人公で中盤まではお話は展開する。
学者いうところの「藤壺・紫の上系」と「夕顔・玉鬘」の並び展開という見立てである。
なんとも比較しにくい二人であるが、質の違う波乱万丈人生には違いない。
世間的にはヒカルのおかげで。世人からうらやましがられる人生とはいえ・・・
その辺、明石のおんなも、よくわからない花散里もよく似ている。


まあ、ここんところまではある意味で通俗王朝小説である。
アーサー王伝説だって、ランスロットとアーサー王妃の不倫から初めてお話は面白くなる。
源氏だって、三ノ宮降嫁による均衡感が崩れた不安の中で、柏木との不倫・・・懐胎なんかでがぜん面白くなるのですよ。

思えば、父の妻を寝取って、子まで為したのは、誰の所業だった?
あまつさえ、登極まで・・・・
逆に寝取られても文句が言えまい。
つまるところ「因果話」である。

セクハラを繰り返した養女らしき玉鬘も、無骨な黒髭大将に拐われた。
内侍としての将来が決まっていたのに・・・
これって、ある部分非対称的ですが、皇妃内定の朧月夜が、ヒカルとのアバンチュールで、泣く泣く辞退し、内侍に就任した
エピソードに似ている。

そんなこんなで、この大河小説はいわく言いがたく面白い。


毎度のオススメは、窯変源氏
内面告白的独白が多少煩わしいが、慣れれば橋本治流儀なリズムになる。

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