2017年5月22日月曜日

選挙・任命・採用




公務員なる職種。
人口比で、概ねシングルパーセント。
少なければ、行政サービスが粗末とも、多ければ行政効率が悪いとも・・・これは何とも言えない。
ちなみに、アメリカだと8%くらいで、日本は3%。
チープスモールガバメントが一番良いと思うが、それはある意味で厳しい自己責任(管理)の世界でもある。

しかし、量を論じるよりも大事なことは「質の担保」である。
どういう資質の人材を確保すべきかという観点から持続可能な制度設計が肝要・・・までは総論として異論はない。
公僕の選び方は様々であるが

公選職員(住民の選挙で被選挙資格者の中から選ぶ)
任命職員(公選職員が一定の要件の範囲から指名する)
採用職員(一般公募で、任命職員が選ぶ)

ザッと分類すればこういう事なのですが・・・・



悪辣な経営の元で不法投棄された産業廃棄物により深刻な健康被害が発生
長々と州裁判所の審理の結果、懲罰的賠償を含め原告の圧勝・・・ハッピーエンドで幕が降りるような単純な事ではない。
被告企業は当然にアピール(州最高裁へ飛躍上告)
ドラマはここから始まる。


アメリカンとのビジネスにおいて契約書に書き込むべき特別な事項として、

陪審制の排除
合意管轄(これ自体当たり前だが、裁判官公選制度の州を排除または限定するということ)


保安官や地方検事が公選制と言うことはよくドラマに登場するから、ある程度周知ではあるが、
州裁判官までが・・・
少なくともこのリーガルミステリーでは、ミシシッピ州はそういう制度らしい。

大企業の不法行為を起因とする訴訟戦術の最たるものは「時間稼ぎによる原告団への兵糧攻め」と
相場が決まっています。
資力に乏しい住民側が根をあげたところを見計らって、やすい慰謝料で秘密保持付きの和解。
しかし、ここミシシッピ州では、そんなまどろっこしい事はせずにもっと狡猾な方法を採用します。

何年かおきに実施される裁判官選挙。
大企業有利な判決を書いてくれそうな法律家を立候補させ、ド派手な選挙運動で当選させる。
あとは・・・

判決を金で買う司法制度ってことになりますが、そういう言い方は有権者に失礼というものです。
民意がそうだと言うことです。
輿論(ヨロン)でなく世論(セロン)の空気に流されたとしても、
それはそれでそう言う仕組みを選んだのも州の住民である。
日頃接触が多そうな議会議員であってもそうであるように、裁判官の真贋の見極めが住民に出来るとは思えないし、
実際のところ興味も接点も少ない。
若くてハンサムで清潔感一杯で教会に通い家庭を大事にしてる(雰囲気)をかもし出せれば、当確(笑)


物語は・・・女性で中道良心派の現職不利のまま投票日をむかえます。
グリシャムのリーガルミステリーの常として、最終回逆転というカタルシスを用意しているのですが
豈図らんや。
当選したのが新人
その新人裁判官は、大企業有利な意見書をドンドン書きまくります。
一審敗訴で、企業存亡の危機に立った悪辣な経営者の策謀は大成功し、あまつさえ、経営悪化のフェイクニュースを流すことにより
秘密裏に買い占めた自社株でぼろ儲け。
悪の栄える試しは・・・いくらでもあるのです(笑)
一方で、手弁当で訴訟を闘った小さな事務所は自己破産。
あとの行方は・・・よく分かりません。
都会ならば、ストリートローヤーに身をおとすのでしょうが、寂れた田舎町じゃねえ。


胸くその悪くなるような結幕ですが、多少の因果応報のエピソードがついていました。
しかし、悪の黒幕に正義の鉄槌が落ちたわけではない。
映画化の予定は聞いてませんが、原作通りの結果にならない事は確実。
さしあたり、二つくらいのエンディング案がありそう。



公僕の選び方として「公選」は最良の制度だとは思いますが、持続可能な制度かと言われれば否としか言えない。
民度とか民意という不確かなものに未来を委ねた歴史の結末は、我々はすでに知っているのですよ。










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