2017年8月6日日曜日

西洋珍説人肉抵當裁判






多分ですが、本邦初訳の際の邦題。
貸金返済不能時には人肉一ポンドで代物弁済を行うと言う契約の適否の裁判が
あまりに衝撃的だったのでしょう。
裁判所嫌いな倭人とて、大岡政談や遠山の金さんに喝采を挙げるところを見るに
結構リーガルミステリーが好きなのです。
聞き及ぶに、江戸は馬喰町あたりは、民事訴訟のためにやって来た連中の
滞在地だったらしいし、訴訟件数たるや、、にわかに信じ難い。


この翻訳は、井上勤氏らしいが、来歴があまり詳らかではない。
ネットの情報も限定的。
歌舞伎の外題めいているのは、当時の風潮みたいです。
どんな雰囲気なのか多少は興味あり、ですが、それは本論ではない。

このシェイクスピアの傑作は、傑作らしく多様な読み方が出来て、
法学演習や資本論の講義にも使われます。
経済学的視座はさておき、法律的には(今の日本法だと)アナだらけで
討議素材にもならないがなあ。
ジャンルとしては喜劇とされますが、ユダヤ人の「悲劇」と見ることも出来る。
言ってみれば、シャイロックは嵌められたのです。
白人の共同体社会から途絶された金融業者にとって信じられるものは「契約」だけ。
ころおりしも「身分から契約へ」の転換期。
近代社会はすぐそこなのですが、証文があればなんでも通るとは限らない。
不当な訴訟指揮と過度な文理解釈の犠牲者に涙しないわけにはいかない。

実際に見た舞台は大昔
浅利慶太演出、滝沢修さんのシャイロックで、悲劇的に描かれてまして、アリャアリャって。
戦後以降、邪悪貪欲なユダヤ人金貸なる人物造形はチョットリスク。


しかし、裁判が山場とは言え、本来はバサーニオとポーシャの結婚譚。
箱選びや指輪の痴話喧嘩があまりテーマにならない。


まあ、イヌも食わない夫婦の諍いと言うこと(笑)

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