かつては秋刀魚や鰯は、下魚といわれたものである。
慎み深い高級キャリアウーマンが口にするものではないが
あの香ばしい匂いには抗しがたかったにちがいない。
かの才女ムラサキも、夫の留守にこっそりと鰯を焼いて賞味したらしいが、
あの匂いはファブリーズでも隠しきれない。
帰宅した夫に叱り飛ばされたのか、揶揄されたのかどっちかは知りませんが、
言われっぱなしで黙っているようなオンナじゃない。
すました顔で、一首
ひのもとに はやらせ給ふ いわしみず まゐらぬ人は あらじとぞおもふ
石清水八幡宮と鰯を巧みに懸け、倭人だったら誰だってイワシくらいって、
きりかえしたらしい。
一説に、和泉式部伝説ともいうのですが、恋多き嫋嫋たる和泉には相応しくない。
蝸牛庵ご贔屓の清少納言ならって気もしますが、
彼女は趣味嗜好の矜恃が高すぎますから、多分食わず嫌いだったように思えます。
イワシは「弱し」が転じたというのが通説。
確かに、青魚は、鮮度が一番。
一体、式部は、どこでイワシの美味を覚えたのか?
海のない今日の都では、イワシ、サンマでも、鮮魚と名がつけば高級魚だが おいそれと手に入るものではない。
従って、かの伝説も疑わしいのですが、
式部は、少女時代に、父の赴任先の北陸での生活経験があるはず。
最高鮮度の鰯をその時に食べたのであれば、
きっと忘れられない美味だったに違いない。 京に帰ってきて、あの味が忘れられない・・・・ってありげな話です。 落語ならば・・・
イワシは越前にかぎる(笑)
ちなみに、鰯を注文する時に、上方の粋なお店ですと・・・
ご主人、ムラサキを焼いてくれますか?
・・・・・
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