2014年9月20日土曜日

素直になれない・・・・オンナ



彼女の父は一国の政治をも牛耳る実力者であり、
身分の背景もあり、オンナは次期国王の王妃になった。
王妃に選ばれるほどの、
 
美貌
気品
教養
知性
 
何においても人に優れていることがシアワセかどうかはわからない。
愛する東宮との間には可愛い娘が一人。
しかし、夫は夭折。
 
 
時がたち、彼女が選んだ(選ばれたというべきか)オトコは、東宮の父の子供。
年下の義理の伯父にあたりますが、これまた申し分のないいいオトコ
何においても人に優れる恋人を持つことがシアワセかどうかわからない。
誰よりも優れているという自負心は、あまりに矜持が高すぎて逆にオトコは持て余す。

誰よりも素晴らしいオトコにのめりこんでいくと、独占渇望ながらも、
誇りの高さから「すなお」になれない。
本心を押し殺す自己抑圧は、邪心・妬心となって、
オトコの周辺のオンナたちに祟りをなす。
生あるうちは、その邪心に気づくことはなかったが、死してなおその妬心に苦しめられる。
時経て、火宅の人となり、無明六道をさまようオンナは、やっとの思いで
仏の功徳で成仏できる・・・って予定調和の演目が謡曲「野々宮」


源氏に登場する女達の中で、人気があるのは「夕顔とか紫の上」
六条御息所は、このようにあまりにも非の打ち所がなく、逆に不人気(・・だと思われます)
実はこのとおり最高の女性なんですが・・・
恋人選びは難しい。


 
秋舞台の謡曲は・・・
季節感があり、優美で・・・ってことで「野々宮」の人気は高い。
六条御息所が登場する演目は、有名ドコロは「葵の上」
ヒカルの正妻に生き霊となって取り付く怖い怖いお話。

マクベス夫人は、主殺しの悔悟からか、いくら手を洗っても流せ落とせない血の汚れに
おののくのですが、御息所も、葵上の安産祈願の丁字の薫が肌から取れず・・・
生霊となって取り憑いたことに慚愧します。
 
一方「野々宮」のほうでは、己の邪心・妬心からくる罪の重さに打ちひしがれ
救いを求める高貴な女性として登場します。

頃は長月・・・ちょうど今頃です。
嵯峨野あたりの散策には絶好です。
 
御息所の娘が伊勢斎宮になり、旅立つ前に、
ヒカルが、嵯峨野の野々宮に今生の別れと訪ねてくる・・・ちょっといいシーン。
相思相愛のくせに、プライドの高さで幸せになれなかった
2人の相聞の語り合いはしみじみと秋霜の風景をかもし出すのです。


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