2015年10月23日金曜日

社会派なるミステリーとは

人間を描かないと文芸とは言わないが・・・・・・・

昭和29年の北海道は災厄の年だった。
岩内では市街地の八割が火災炎上。
函館港外では洞爺丸の海難事故
この沈没事故は、低開発国ならいざ知らず、もはや戦後ではないわけで、タイタニック事件に
並ぶ大惨事であった。

これだけのインシデントを素材にしないって訳はないが、水上勉さんの飢餓海峡以外にはろくなっていうかまずない。
出来栄えが良すぎるからだろうか?
水上勉は、北陸の土着的な哀しい女の情念なんかで有名になったが、
元々は社会派ミステリ作家である。
松本清張と双璧といってもいいが、作風が変わってしまった。
いまや、水上勉も読まれることが少なくなったが、これは、彼の描く女性を
演じられるような女優がいないことに起因する映画化あるいはドラマ化の不在による。

若尾文子
佐久間良子
岩下志麻
左幸子

これらの女優さんのリストが雄弁に物語っている。


飢餓海峡


上記の事件を背景とするが、時代は昭和22年とされている。
まさしく「飢餓」の時代である。
物質的ということもあるが精神的にも喪失感からくる精神的な空洞による部分が大きい。

お話の展開は、ゼロの焦点風でもあり、砂の器的でもある。
松本清張へのオマージュではなく、社会派ミステリと銘打てば、このような展開になることが必然だということである。
時系列的には、多少松本作品が先行する。

実のところ、原作は初めて読んだ。
内田吐夢の映画版は、オールタイムベストテンにえらばれるくらいの名作とされる。
しかし、最新版の ベストテンからは脱落した。
改めてDVDをみてみましたが・・・・長尺を感じさせないつくりではあるが、原作以上とは言い難い。
まあ、審査員の顔ぶれでどうにでも変わるし、オズやナルセ、クロサワを外すなんて
度胸はないだろうし、それ以外の監督作品が割りを食う。


主人公を三國連太郎
執念の元刑事が、伴淳三郎・・・・は当然記憶にあるが、
若い警部補が、高倉健だとはおもってはいなかった。

ちなみにヒロインは、左幸子。京マチ子さんに似た感じだった。

原作本は、古さを感じさせないが、映画版はどうもねえ。
オールタイムベストとは言いにくい。



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