2015年10月3日土曜日

岩波現代文庫「宋家王朝」を読む




アメリカンの女性作家を書き上げ
中国人には全く顧みられることがなく
倭人だけが好んで読む(読んだ)        ・・・ ノーベル文学賞受賞作品


というような書き出しだったと記憶している某紙の解説版
世界文学全集収録の定番商品だったが、最近は読むヒトもいないようだ。
大手どころの文庫版にはあることになっているが、探し方が悪いのかお目にかからない。
いまさらパール・バックなんか読み返そうとも思わないが、
中国版「ブッテンブローグ家の人々」って思えば、面白くなくはない。

岩波文庫にも収録されているようだが、どうせ読むならば史上最強の三姉妹のほうが
面白い・・・と思いつつもいささか・・・

パール・バックの「太地」がアメリカンのチャイナ意識の影響を与えたのかどうかは知らない。
しかし、アメリカンは、どうして過度に中国大陸に思い入れるのか?
思い入れるというより・・・踏まれてもついて行く下駄の雪のようにすら覚える。
宋家の三姉妹は、アメリカで教育を受け、どの程度の信仰心かはしらないがクリスチャン
そのような魅力的な彼女たちのロビイングだけであそこまで肩入れするものか?

当時の中国の権力は

杜氏(マフィア)
蒋氏(殺し屋上がりの国家の簒奪者)
宋氏(裏社会の支援で浙江財閥を牛耳る)
孔氏(孔子の末裔とされる金融財閥)

によって支配されていたが、内実は地縁血縁による強固な結びつきを持つシンジケート集団
孫文の辛亥革命も、彼らの支援があってこそ
彼の衣鉢を継ぐとされる蒋介石も、宋家の姉妹を通じて義兄弟であったが故である。
あんなゴロツキに娘をやるつもりは毛頭なかったが、宋家自体黒社会の支援で巨大化して訳であって
偉そうなことを言えるものではない。

もっとも、蒋介石の求愛を拒み、孫文と駆け落ちした次女
やむなく、三女の宋美齢と結婚した蒋介石

この辺りの歯車がちょっと狂っていれば、
二十世紀前半の大陸情勢の未来はどうなったか分からない。
が、軍閥割拠する戦国騒乱がもう少し長く続いたのかもしれない。
アメリカンの標榜する価値観とは一番縁遠い世界に割拠する、
言ってみればフロント企業集団である。
日本軍の特務機関は阿片取引で活動資金を捻出したと批判されるが、
蒋介石政権は政権維持費用の多くを阿片・・・更にはヘロインまでに依存していたし、
あまつさえ、アメリカ向けの麻薬貿易を一手に握っていたらしい。

抗日戦線なるものの内実は、

逃げまわる共産党
蓄財に狂奔する国民党政権
理想に燃えるアメリカ義勇航空隊   と多少ディフォルメして言えばそうなる。

ルーズベルト政権も、腐敗堕落した国民党政権を支持したわけでもなく、
日本軍を大陸に釘付けにして、東方や南方に目を向けないようにさえしてくれればいいわけで
そのためのコストを思えば安上がりって程度のことのようである。
つまりは「敵の敵は味方」って単純な話しだったのかもしれない。


ちなみに、作者の筆はまあ冷静です。
かの「大虐殺」事件をどう取り扱っているか・・・・興味津々ですが
さらりと一行


南京の三十万人を虐殺の危険にさらした(・・・主語は蒋介石)


原文は知りませんが、なかなか巧みですねえ(笑)














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