2017年1月16日月曜日

ATGの時代(映画館が教室だった最後の頃)




難波の九条あたりのカルト映画館
かの松◯料理組合とかなんとか聞き覚えのある界隈の近くです・・・・・こっちの話は守備範囲じゃないからパス。
開業20周年と言うことで、映画作家の回顧展を開催中。
二度とスクリーンで観ることはあるまいと思っていた「黒木和雄監督作品」


日本の悪霊
龍馬暗殺
祭りの準備


彼は晩年の所謂「戦争レクイエム四部作」で名が知れるものの、
申し訳ない言い方しますが、情緒主義定型左翼イデオロギー的反戦映画には与しない。
むしろ、これらの七十年代の傑作群で歴史に残るべきであると思っています。
しかし、場末の映画館のこと、
客足はそこそこですが、懐古趣味的な観客群ばかりで(人の事は言えませんが)若者がいない。

六十年代から七十年代のメタファやキーワードなりがポリティカルチャー的に氾濫し、
今見れば粗削りだし微苦笑を抑え切れません。
しかし、そういう時代だったという事であり、同時代的に生きていたって実感を改めて感じさせます。
多分若い観客には意味不明だと思いますが、本当は見て欲しい。



日本の悪霊

全共闘教祖と言われた京大文学部中国文学の俊才。
吉川幸次郎の愛弟子であったが、小説に手を染め不興を買った。だからでもなかろうが夭折。
彼の作品集(小説、中国文学論集)は再評価されていいが、過去経緯があって誰も手を出さない。
その原作をあの福田善之が彼特有に解体再構築したシナリオですが・・・とんでもない任侠パロディ映画(笑)
893もオマワリもコインの裏表という皮肉ですかねえ・・佐藤慶二人二役の妙味
毎度の「オトシマエには時効がない」のセリフはこれに由来する。


龍馬暗殺

未だ定かならぬ真相を明らかにするものではない。
暗殺が有ろうと無かろうと当時の政治の流れ(無血改革より流血革命)は大きくは変わらなかった。
したがって、下手人が、新撰組、某幕臣、薩摩藩士、イギリスの使嗾によるテロリストの
だれでも構わない。
しかし仮に生きておれば、明治史の景色はもう少し生き生きとしたものだったかもしれない
少なくとも三菱財閥は似ても似つかぬ様であったことは確か。

この映画では、龍馬は、薩長と幕府の争いの漁夫の利を狙い、第二次革命を夢想し・・・
まるで、ケレンスキーのあとのレーニンやトロツキーのような振る舞い(笑)
それを恐れた中村半次郎一派(薩摩藩)に暗殺されるという設定


祭りの準備

脚本家の中島丈博の自伝的青春編
五十年代後半の土佐中村が舞台。
脇を固める女優陣が・・・

杉本美樹
絵沢萠子
芹明香

となれば、知る人は内容の想像はつく。
よくぞ土佐中村が映画撮影に協賛したものだ・・・土佐っぽの度量かねえ(笑)
竹下景子映画デヴュー作だと思うが、彼女たちに触発されたのかこの映画の演技を見ていれば「息子のお嫁にしたい・・」なんて
発言が世に出るはずがない脱ぎっぷりの良さ。
骨太土俗性豊かなしぶとさのような猥雑性・・・・わすれてしまった太古のおおらかさを描き切る技量には
感服以外の言葉はない。


脚本家との稀有の僥倖であるが、監督はこれを最後に長い低迷にはいり、脚本家は昇り竜となった。
全作品の回顧展ですが、この三本を見れば充分です。


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