2017年1月8日日曜日

ノンキャリの明治維新・・・「天皇の世紀」断章



大佛次郎さんの「天皇の世紀」を再読していますが、文庫版でも十二分冊。
原典引用が多くて、小説というより史伝ですから、サクサクというわけにはいかない。
同時並行でいくつか読んでますから、まあ一年がかりになりそうです。

やっと半分まできまして、薩長同盟から第二次長州征伐まで。
幕府の瓦解が具体的に見えてきたところです。
しかし「瓦解」ではなくて「自壊」という方が正確な気がします。
権力とは倒されるものではなく「倒れる」もののようですね。

自壊の理由は様々でしょうが、ハードウエアやソフトウェアの老朽化もありますが
まずもってヒューマンウエアの不全が大きい。
歴史を動かすのはヒトザルです。
しかし、それは人民なんて無名の大衆でなく無名の大衆の組織化に成功した一握りのノンキャリアである。
マルキストにそう言えば、顔をしかめるだろうが、レーニンの革命組織論はそういうものだ。


有事には学歴エリートに代表されるキャリアは役に立たない・・・少なくともことが多い。
幕末の有名人とか英傑の多くは下級武士やそれ以下の身分である。
ノンキャリアや派遣身分で才あるものを伯楽が見出した。
榎本武揚は、徒士目付の次男坊。幕臣とは言え御家人
勝海舟は、祖父だか父だか忘れましたが、御家人株を買い取った似非幕臣
渋沢栄一に至っては百姓のせがれである。



薩長と幕府の決定的な違いがあるとすればこの点である。
幕府だって、公称旗本八万騎
名馬がいなかったわけじゃない。
伯楽がいなかった、
あるいは駄馬だとおもわれていてもG1に出走させる様なシステムがなかった。

有事における人事システムとは、年次や兵学校での成績なんかに頓着しないのが当り前であり、
日露戦争の際には児玉源太郎があえて格下の参謀総長に就任したりしていたのですが、
太平洋戦争ともなれば、人事システムが硬直し、米軍と比べて異彩をはなったそうな(悪い意味で使いますよ)


大政奉還を決意した慶喜は、反対する高級幕僚達に言い放ったそうな

其方達のうちに如何程の、大久保、西郷、木戸がいるのか?


天つばって、これを言う。
居たんですが、抜擢登用して自由に働かせなかったのはいったいどこの誰だい?




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