2020年7月27日月曜日

篠田節子さんの「夏の災厄」



直木賞作家にして紫綬褒章の栄典に輝く...
直木賞作家なんてゴロゴロいますし、紫綬褒章に至っては
文化人と名がつけば誰でも貰えそう
手っ取り早いのはオリンピックで金メダル。
年齢制限はないし、昨今は競技種目も増えましたから、かつての輝きも翳った。


一言で作風の説明しにくい雑多な小説をあまた生み出しています
これといって残り少ない時間を費消するほどの作品はない。
しかし、この小説は時節もあるが、読み甲斐があります。


パンデミックミステリーではない。
かなり正確な疫学知識を駆使しているのに、編集者が無知。
昭川市(多摩あたりにあった秋川市と勘違いした)で季節外れの日本脳炎の発生し、
現場は概ねその街に限定される。
従って、エピデミックでもないし、アウトブレイクが正確な事態認識。
ミステリーとは「謎解き」である。
その要素(発生の真因とか)もかなりあるが、現場の錯乱や恐慌...
スリラー(不安)やサスペンス(緊張感)の方が大きい。
しかし「現代社会の予言書的な寓話」はけだしその通り
見たような話、聞いたような話がてんこは盛りなちらし寿司

前例のない事態への対処能力のない行政
ローカルなアウトブレイクには興味がない医官官僚
情報とワクチン利権を支配する大学病院や感研
ワクチン開発での製薬会社の暗躍
空気に流される反ワクチン派や住民

買ってまで読む本でもないが、他のパンデミック小説よりは
はるかに面白い。
カドブンのウェブサイトには分割連載しています。
最後まで読めるのか、いて完結するから知りません。


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