小説なんかについてはある意味で最高の「褒め言葉」である。
神話を素材とするから神話的な世界が表現できるものでもない。
しかし「神話」とはつかみ所のない物語世界であるが、
言ってみれば「ヒトザルと社会・・あるいは世界の成り立ちの根源あるいは存在意義の証明」
のようなものである。
虚実を論じるものではない神聖な存在であるので、宗教性をも帯びている。
思い浮かべるに・・・・
GGマルケスの世界(百年の孤独とか・・・)
クトゥルフ神話世界(ラブクラフトの一連の小説群)
ユリシーズ(ジョイス)
失われた時を求めて
日本だと・・・思いつきませんねえ(苦笑)
壮大な神話的世界を持ち得なかった民族だからでしょうか?
古事記、日本書紀を日本「神話」と思うから・・・というか西洋的な神話世界とは
いささか程遠い建国の「かむよごと」
万世一系の天皇家支配の正統性立証文書だとか「黒幕」である藤原一族の代貸し正当化文書とも
言いようは様々ですが、日本人が持ち得た大きな文化遺産であることには間違いはない。
中上健次という作家がいる。
正確には「いた」
残念なことに、アルコールの大量摂取とかの破滅的生活で命を縮めた。
享年46歳
夭折する芸術家とは短い人生であっても生涯でなし得ることも短期間で成し得てしまう
存在だと思うのですが、彼の場合は、まだまだなすべきことをなさないまま
死んでしまった不幸な(彼にとっても読者にとっても)人生だと思われます。
枯木灘
戦後最大の日本文学の収穫とべた褒めする向きもあります。
確かに、中上ワールドの頂点。
彼以降、ろくな芥川賞作家はいないと突放つ評論家もいます。
これに反論も難しい。
一連の作品の{第◯編」として読むべき作品であり、単体で読むにはもったいないというか
人物関係を含めてよくわからない。
大河小説の部分的切り出しである。
紀州熊野とは、まさに神話的風土を有する地帯であり、そこで生まれ育った原体験が
彼の一連の自画像的作品となっている。
息苦しくなるような世界で、楽しく読めるものでもないが、我慢の果てに見えてくるものは
倭人が初めて手にした「神話的世界」の小説である。
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