2017年9月1日金曜日

ゴヤのこと





堀田善衛さんの評伝を再読しています。
サブタイトルは「スペイン 光と影」
ベタですが、スペインとはこういう言い方しか出来ないのだろう。

スペインとは地球規模での最初の世界覇権国家ですが、
覇権国家らしく国家、国土、国民が繁栄をしたという印象はない。
当時の文明の頂点にいたクラッシックローマやイスラム支配から脱却し、
世界覇権を築き上げたのが16から17世紀。
地球規模で収奪した富を無為に浪費し、落日を迎えたのが18から19世紀。
使い切れない財で、インフラ整備、産業振興、社会福祉、教育の充実なんか、
どれをとっても不毛以下だったからやることは山とある。
しかしながら、須らくフランスやイギリス、イタリアから金で買うという愚昧な支配者たち。
つまり、潤ったのは近隣国。
近代化の遅れをとり、名実共に辺境化したのはそれだけの理由があったってこと。


幸いな事にプラドの絵画群にその栄華の片鱗をとどめているだけでも大したものだが、
一部の天才による絵画しか残らなかった。

ベラスケス
エルグレコ
そして....ゴヤ


絵画とは無為な美術品ではあるが、ある種のスポンサーにとっては
実用価値ある道具である。
絵画の宮中席次は宗教画、歴史画、王侯貴族の肖像画なんかを上位に
昨今人気の印象派風風景画や風俗画なんか、まだブルジョアジーがスポンサーになる前だから
お呼びじゃない。
とりわけ肖像画はお見合い写真や遠隔地の祖父祖母へのお土産ニーズ(孫の写真)が
高かったらしい。
画家というより絵師に近いし、待遇もその程度。
堀田さん曰く、宮廷お抱えの道化師やコック程度。
美意識や批評精神に満ちた芸術家なんて幻想である。


その意味で、画筆の力で社会批判なんて、ゴヤを萌芽とする。
おりしもフランス革命の前後。
偉大な芸術家とは「時代を切り開く才能なり」があるのですよ。


(あとは後日に)

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