2017年9月14日木曜日

関ヶ原



日本映画史上初めての本格映像化だそうです。
毎度の構想◯◯年なんてキャッチコピーは今時流行らないのですがねえ(^.^)
司馬さんの原作に概ね忠実....という事は原作の出来が映画作品のレベルの上限だという事です。
非常に面白い歴史小説ですから、映画も原作に沿った箇所は良いが、
勝手な創作部分と合戦シーンがなければそれなりかも。



蝸牛庵が製作者ならば、ファーストシーンは絶対にこれ。

時代は明治の初中期
場所は市ヶ谷の陸軍大学校
将来の帝国陸軍の中核となる若手の俊才達に参謀教育の真っ最中
プロシアから招かれた教官メッケル少佐は、関ヶ原の合戦の両軍の配置図を前に
瞬時に言い切る!

西軍の圧勝

そこで映像が変わり、タイトルの『関ヶ原』



実は神童と言われた蝸牛庵も、当時から子供相手の読物の戦図を観るに
どうして石田三成さんが負けたか不思議だった。
凡人となり、司馬遼太郎の「関ヶ原」を読み、始めて納得。


本当の合戦は会議室の調略(陰謀やら謀略)であらかた決まっているものだ。
後は想定どうり「裏切って」くれるかどうかにかかっている。
しかしながらこの有名なメッケルの逸話は伝説らしい。
何にせよ、メッケル少佐は正統的な歩兵操典のみならず、
後方攪乱等の謀略論まで教えた訳で、これは後に明石元二郎の活躍に結びつく。


これを契機に世界史に残る三大合戦として売り込もうなんて地元の目算は
勝手にやっていただいたらいいのですが、
歴史の分水嶺になるような戦いではないし、動員された大軍勢の多くは
洞ヶ峠状態。両軍あわせて二十万の激突なら規模としては最大級だが、
西軍の二割が裏切り....これじゃそもそも戦争にならない。

ちなみに、あとのふたつは

ゲティスバーグ
ワーテルロー

こちらはまぎれもなく「その時歴史は動き」ました。


比喩的に言えば

覇権企業たる豊臣HDは創業者とその後継者の確執の中で
幼い三代目を推戴して、傘下有力企業オーナーによる集団指導体制に移行
しかしながら、古参老練な代表取締役副社長と筆頭上席執行役員兼秘書部長が経営方針をめぐり反目。
三代目後見の座をめぐっての大規模な私闘が、関ヶ原の戦い。

という見立て。
実際は水面下のプロキシーファイトが一番の見どころ。
株主総会では、出席もしないし委任状も出さない、出席しても議決権行使書の未行使、
土壇場の反対投票なんかでタヌキの圧勝に終わりました。

予算に限りがあり、高度な撮影技術を駆使したり、大量のエキストラを集められない以上
だるい小競り合いを延々と見せられ退屈極まりない。
バッサリそういうシーンは切ればいいのです。
作家主義の監督ならそうするのでしょうが、
最近の製作委員会方式だと凡庸にしかならない。



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