2018年1月14日日曜日

窯変「女の一生」



19世紀フランス文学ほど豊穣な世界はない。

スタンダール
モーパッサン
ユーゴー
デュマ
フローベール

好みでない作家を除外してもこんなところ....
とりわけ、イタリアオペラ定番のドロドロ劇を細やかな心理描写で
描き切る。

ボヴァリー夫人
女の一生

素晴らしい原作小説を映像化しようなんて無謀としか思えないが、
著作隣接権に触れないから安易に手がけてしまう。
結果、個人的印象だが原作を超えるものは皆無。
インスパイアされた小品には小洒落たものもありますが、
名匠と呼ばれる大監督は、そもそも敬して遠ざけています。
さあ、今回のチャレンジはどうだったのでしょうか?


モーパッサン原作小説の映画化だと思わずに、
インスパイア版だと思えば(実際にそうだ)実に素晴らしい。
岩波ホールが上映するだけのことはある。

夢見るしあわせな女の一生
現実の苛酷で不遇な人生

それぞれが、南仏の陽光に煌めく映像と鉛色の冬の波濤のそれで
表現される。
大胆な省略と時間軸の錯綜による画面展開が多く、
こうでもしてもらわないと観客はついていけない(^^)

不実で浮気まみれの夫は痴情のもつれからの事件死
心労からの両親の相次ぐ死去
不登校引きこもりの溺愛する息子は駆け落ち同然に出奔し
度々の多額の金員の無心
借財の果ての破産

圧倒的に鉛色の画面ばかりで息がつまりそう。


しかし、予想外に陽光の映像でエンディング
これはないとおもいますが、興行を考えての金主に妥協だなあ。
因みに原作小説もそうなってます。
小説家だって版元さんには頭が上がらない。

ボヴァリー夫人もオリジナルはとんでもなくスキャンダラス
だったが、後難を恐れた版元の意向でマイルドに改変させられた。
それでも猥褻物頒布かなんかで裁判にかけられました。


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