2019年12月29日日曜日

野口晴子の昭和



2002年に、晴子情歌が刊行
その十年後に文庫化
何故この時期かは知らないが、一連の福澤彰之シリーズが
完結したからだろう。
残念ながら、あまり売れなかったみたい
良貨は悪貨に駆逐されるのだ!

晴子が息子彰之に宛てた大部な手紙(一人称)と
漁師となった彰之の洋上の生活(三人称)が混在する
決して読み易いとは言わない...まあ純文学
髙村薫だからと言ってもミステリーだと勘違いしてはならない。
殺人事件をあれほどモチーフにしても、ドストエフスキーを
ミステリー作家と言わないのと同じ!
でも純文学的でもない。
圧倒的な筆力に支えられた骨格の太さは、私小説とは一線を画す。


このシリーズの主人公は、晴子の息子の福澤彰之ですが、
第一部である「晴子情歌」は母の歴史の回顧
晴子は、大正半ば頃の生まれで、福澤彰之は戦後しばらくして。
紆余曲折があり、福澤家の三男の嫁になり、
二人の子供の母。

福澤家は地元政財界の重鎮にして名家の末裔
戦前の当主は中央政界でも活躍し、三男以外は華麗なる閨閥の一員として
政治や業界に君臨する
しかしながら家族の闇はどこにでもあり...

本来ならばなんちゃら家の一族みたいに、陰惨な
連続殺人が起きる事を期待...しても無駄(^^)
しかし心理の葛藤劇は、それらを上まわる。

晴子の長女は三男の愛人に捨てたこども
長男彰之の父は...実は長男
これで何もおきないはずがない。

第二部は「新リア王」
タイトルからして絶妙であるが、
例えば...新カラマーゾフの一族でも良かったかも

To be continued

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