2020年1月12日日曜日

陸奥のリア王


かのシェイクスピアの「リア王」にはネタ本がある。
クラシックローマ支配前のケルト伝説。
結幕を悲劇に改変したが故に洛陽の紙価を高めたのですが...

髙村薫の「新リア王」を読んでます。
聞いたことのない親鸞賞なる文学賞作品です。
東本願寺系の財団が胴元ですが、隔年毎に授与されます。
優れた文学ならばなんでも..ですので、
僧侶が主人公だから選ばれたわけでもない(多少はそうかも)
優れた文学が毎年創出されるわけでもなく、
隔年というのは合理的だし、商業化された文学賞と一線を画す。
だから、春夏選考なんかの新人の登竜門賞は愚作の山なの。



時代は八十年代のいつか
自民党田中派の長老議員である福澤榮
榮の三男である僧侶の彰之
榮は政財界に君臨する青森の王だが、
一族に澱む確執や不協和音は、名家の黄昏を予感させる
彰之は当主の三男であるが、戸籍上は榮の末弟の子供(末弟の妻晴子と榮の不倫)
親子とは言えそんな二人に交点も接点もあるはずが無い。
その二人の廃寺での日夜を徹しての対話編...それが新リア王

政治の光と影の論述本はごまんとあるが、
福澤榮の語る政治の世界ほどリアリズムに満ちて面白いものはない。
福澤彰之の語る解脱にたどり着けない宗門の修行渡世も
身につまされる...というか在家私度僧にはじつによくわかる。
凡庸な政界裏話や訳知り顔の宗教書を凌駕する圧倒的な筆力。
王権と(仏)教権が同時に学べる実に経済的な小説!

良書が売れないのは今に始まったことではないが、
実に困った事だ。
福澤一族殺人事件とでもすれば、多少は...

しかし、汚職疑惑とか金庫番の不可解な死とか
だんだんよくなる法華の太鼓なんですよ(^.^)


To be continued

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