2016年7月17日日曜日

喜ばしさも半分くらい


先日稽古場でお目にかかりましたが、なにもおっしゃいませんでした。
まあ、嬉しがっていい散らかすようなものではありませんから・・・


珍しく紙新聞に目を通せば、新たに5名の人間国宝が認定されたそうで、なんとうち二人までがシテ方能楽師である。
慶賀の至りではあるが、他の分野からすればバランスが悪い。
文化財保護法では、無形文化財とは「演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化的所産で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの」とされ、
無形文化財とは芸能、工芸技術等の無形の「わざ」そのものを指すが、その「わざ」を高度に体得している個人または団体のうち
重要なものを重要無形文化財に指定するとともに、その「わざ」を体現する個人または団体を保持者または保持団体に認定する・・・とされる。
俗に人間国宝と言われるが制度発足以来半世紀経過し、認定を受けた方は百八十人程度。多くは物故者である。

シテ方能楽師に限れば、今回で累計で15名。
ご存命の方は4名です。以下失礼を承知で敬称を略します。

野村四郎は、狂言の故野村万蔵のご子息ですが、親子二代、二人の兄弟共々人間国宝というとんでもない壮挙なのです。
舞台を拝見する程度で特段の面識はありません。

大槻文蔵は、師匠筋の方ですので、比較的親しくさせていただいています。
次回くらいにはワキ方をお願いしようかなって思っておりましたが、 ちょっと敷居が高くなった。
親子三代の能楽師の名門ですが、四代目候補のご子息が、サラリーマンに成っちゃいまして、後継を危うんでおりましたが、
神童の名に相応しい芸養子をお取りになりましたので、まずは安泰。
運営される能楽堂を稽古場にお借りもしています。


政府としても古典芸能の保持継承育成に相応の努力を払ってはいますが、国費を突っ込めば継承出来るってものじゃない。
歌舞伎は松竹の庇護のもと大衆人気に支えられていますが、
この世界の長老の嘆きは、若手人気役者の浮ついたケレン味に流された芸風の跋扈ということらしい。
文楽は、国費まる抱え。
嬉しいことにいささか人気復活の兆しはあるようですが、足腰の弱さでしょうか
地についた人気を確実なものにする点がまだまだ弱いと言われます。

さて、能楽ですが、様々な国費支援はあるとはいえ、基本はパトロンが支えています。
お弟子が、満席でも黒字になるかどうかの公演のチケットの多くを引き受け、
毎月のお稽古料をしはらい、
毎年の発表会に下手ながら出演し、やすからぬお役料なんかを負担する。
能楽が好きだからやってますが、メセナの精神なくしては続かない。
能楽は家業ですから、家の芸として継承されるが、お弟子は一代。
高齢化が進むし、女性ばかりだし、蝸牛庵が未だに若手(笑)
昔は、花嫁修業の一つのようで、妙齢の女性もあまた。
艶めいたウワサも多々あったらしいが.........

式学としての気位の高さが、どうも昨今邪魔をする。
ヒラメの多そうな社風の大企業のトップなんかが能楽に入れあげると、
少なくとも財政的には随分と楽になる。
かつてのことですが、産業の古古米と一部に揶揄される大企業のトップは木挽町あたりに生家があったらしい。
若い頃より新橋に通い詰め、小唄端唄ナンチャラが大好き
なもんで、役員部長クラスは日々練習に精を出した・・・・とかや。




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