2016年7月30日土曜日

中村紘子さんを悼む





特段、死に至る病名を公表する必要が何処にある。
敢えて言いたければ、蝸牛庵の予定死亡広告稿のように「心不全」と書けばいい。
佳人ならば、労咳とか骨髄性白血病が似つかわしい。

彼女は、ピアニストとしては、無駄に美貌と才能に恵まれすぎた。
ショパン弾きとして歴史に残るかと言われれば、異論はあるだろうが、さあどうでしょうか?
しかし、彼女のエッセイは、クラシック音楽を理解する以上、必見だと思っています。

チャイコフスキーコンクール
ピアニストという蛮族

なんかは、優れてマグニフィセントである。
旦那がゴーストライターともささやかれたが、それは違うでしょう。
旦那の文才は、初期の薫君四部作以上でも以下でもない。
今読み返しても(当時もそうだったが)・・・・・だからなんなの?っていう苛立たしい読後感。
早々にペンを折り、ゴルフと投資三昧に徹したのは、賢明というものです。
ゴルフの腕前は存じ上げないが、投資成績はなかなかもののとささやかれる。


彼女はピアニストとして修練する時間を、あたら無駄に費やしたのかもしれない。
だが、彼女のTV番組「ピアノのおけいこ」はほんとうにすばらしかった。
プロ(生徒さんは音大留学クラスのレベルと思われますが)をプロが教えるとはこういうものか!
毎月、白木の付け台の前で、プロ(紘子さんのお弟子でもありましたが)に「レッスン」を受けていた程度の「似非生徒」でも、
そのすごさには圧倒された。


あなた、いま自分がコントロールできない音を出したでしょう・・・・って、ほとんど意味不明ですが、背筋が寒くなる。


華の命は短いが、彼女の演奏も後期はかなり無理をされていたらしい(生演奏はお若いときしか聞いたことがないもんで・・・)
間接話法で聞き及ぶに、相当に激しい調律でホールのピアノを締め上げていたそうです。
弦をきつめに張り、鍵盤のしたには薄い板をいれ・・・・
演奏会が終わると、そのピアノは瀕死状態だった・・・とも言われる。


ピアニスト(に限らず演奏家はすべからくそうらしいが)は、非常な知的肉体労働者である。
ショパンの曲は信じがたく指に悪いし、演奏行為自体が上半身全体を相当に痛めつける。
それなりに「手入れ」はしていたのでしょうが・・・・・御歳72歳。


合掌









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