2016年7月21日木曜日

ブルックリン



あれは「天罰」だ!とアイリッシュは口に出しては言わないが、先祖の悪業は、孫子に祟る。
エゲレスの最終的没落はここに始まったのだ。
アイルランドの19世紀半ばのジャガイモ飢饉の被害は、ペスト、コレラに匹敵する。
発端は天災であり、イングランドの細菌兵器でも何でもない。
しかし、その後の展開はイングランドによる人災以外の何物でもない。
故意悪意があったかどうかは論争があるが、とりあえず完全に否定されてはいないし、不作為があったことには間違いがない。
時の首相が遅ればせながら謝罪しても、あのジェノサイドもどきの悪行は歴史からは消えない。
イングランドがアイルランドで行なった過酷な支配については、ケンローチの映画にも詳しいが、
怒りなくしてスクリーン見ること能わず・・・
餓死と移民で、アイルランドからは人影が消えんばかりだったそうな。
今のシリアを思い出す惨状。

新世界での再出発でも苦難は続く。
NYのポリスやファイヤーマンにアイリッシュが多いのは、3K職場しか働き口が無かったからであり、
正業にあぶれた者たちはマフィアとなった。
イタリアンだけがマフィアではない。
この辺りは、映画「ギャングオブニューヨーク」に詳しい。
ヒスパニックの増加で今やアメリカンの一割強に過ぎないアイリッシュであるが、未だに相応の社会勢力である。
その苦難の歴史理解なくしては、そこはかとなく哀愁の漂うアイリッシュ系映画の理解は出来ないが、
なんとなく倭人とのシンパシーってあるみたいです。


ブルックリン


地味な映画ですが、オスカーの複数の主要部門にノミネートされたのは
それだけの理由があるのですよ。





ヒロインを演じるのは、シアーシャローナン
ケイトブランシェットが絶賛したアクトレスらしいが、なかなかのものです。
山麓の牧場の雌牛がソフィティケイトなニューヨーカーに変身って、そう簡単に出来るものではないし、
旧世界と新世界の間で揺れ動く心情も見事に演じ切りました。

なんか褒めすぎですねえ・・・めずらしく(笑)


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