2016年7月22日金曜日
黒いオーケストラ
世に「史録」なる著作形式があり、児島襄氏が得意とする。
史料でもなく、歴史小説でもない歴史書。
前者のような価値はなく、後者みたいに面白くもない。
ヒトラーの戦い
書庫の奥から再発見。
文庫版で10巻ちかくあるのですが、昨今の風潮に鑑みて再読してみよう。
最初二巻は第二次大戦開戦まで。
アレヨアレヨといううちに「彼」は権力の座についてしまうのですが、主張は単純。
戦後政治の総清算
聞いたようなセリフ(笑)
ワイマール憲法からの脱却(全権受任法で合法的に実現)
ベルサイユ条約の無力化による再軍備(なし崩し的に、口先非難は歯牙にもかけず)
簒奪された国土の奪還(順番に、ラインラント、オーストラリア、ズデーテン、ダンツィヒ)
これらも有りげなスローガン。
力による現状の見直しなんぞは許されるものではないが、
ドイツ国民は、相当にワイマール体制には怨み骨髄だったようで、拍手大喝采!
西洋列強も、ドイツを力では押さえこめるが、戦争を好まず、安易な妥協を繰り返す。
悲惨なのはポーランド。
英仏との安全保障条約はあっても、ポーランド人の為に自分の血を流そうとは思わない。
契約とか国際信義なんて所詮はそんなもの。
戦争を回避し平和的にって時間を浪費しているうちに、更に巨大な戦争を引き起こしてしまった。
強引な戦争をも辞さない「彼」のやり口には、プロシア以来のドイツ国防軍首脳陣も
批判的だったようで、1938年には既に「黒いオーケストラ」と呼ばれた反ヒトラー組織が作られた。
なかなか壮観なメンバーで、倭風に言えば、その中核には
新旧陸自幕僚長
東部方面総監部首脳
日銀総裁
警視総監
横浜市長 等々
本気になれば、不首尾に終わるはずがないのですが、戦略目的がよろしくなかった。
この組織は、彼を排除する事は手段であり、目的は負けるだろう戦争を回避する事にあった。
チェコ侵攻は絶対的に列強との戦争勃発のトリガーになるはずだったが、
クーデター直前にチェンバレンが揉み手をしながらミュンヘンまで妥協案を持ってやってくる体たらく。
戦争さえ起こらなければ、ヒトラー排除の大義はない・・・・
そうこうしているうちに「彼」の権力やセキュリテーシステムはより強固となり、多くのクーデター計画はすべからく失敗に終わった。
豚は太らせてから食ってもいいが、邪悪な権力者は早めにつぶしておきませんと・・・・(という教訓です)
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