2019年9月19日木曜日

日本推理小説史



文藝の宮中席次的には殿上人の末席で、SF小説とかで
ブービーメーカーを競い合う。
そんな日の当たらない世界の事績を丁寧に発掘したのが、
郷原弘氏の掲題の評論
詩人だけでは喰えないから...かどうかは知りません。


昨今は「探偵小説」とは言わない。
況んや、白波物なんて明治の初期
知らなかったが「探偵」なる用語は警察組織における役職だったらしい
主に強行犯を扱う司法警察職員のこと。
探偵と言えば公務員であり...だから私立探偵という表現になる。


そもそも推理小説の定義とはなんだ?
主なエレメントは...

⬛︎犯罪事実の発生
出来るだけ驚天動地淫靡無惨摩訶不可思議がいい。
被害者も若い複数の美人だと三面記事的受け狙い
まあ女性は殺されたら皆さん美人とメディアは書きます。
⬛︎被疑者や動機手口なんかの解明
合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要と
刑事訴訟法では要求されます。
実際は作りものですから結構無理がある。
⬛︎キャラ立ちした探偵
ユニークさが売り物
素人が興味本位で首を突っ込んでもいいが、大抵の職業は
で尽くしました。
今やプロの出番ばかりですが、心に闇もつ下士官クラスばかり。

要するに謎解き&犯人探しが推理小説だということ


西洋の文藝の輸入に触発されたのが、近代文学の濫觴であることは
推理小説もまた然り。
今思えば、著作権侵害も甚だしいが、原作の翻案。
黒岩涙香はこれで一世を風靡し、日本の推理小説の父と言われる。
当時の文壇の保守本流は自然主義文学。
したがって、作りものっぽい推理小説なんか歯牙にもかからないのは
当たり前で、未だにその傾向は変わらないが、
売れなくとも純文学者は喰わねども高楊枝。
へんに気取らずに才能を発揮すればいいのに...

夫婦交換で有名な谷崎と佐藤は、推理小説作家でもあり、
大作家らしく水準の高い作品が数多あります。
ご存知と思いますが、松本清張氏は芥川賞作家です。


因みに、ウィキペディア記載の21世紀の純文学作品一覧

星野智幸 - 『俺俺』
長嶋有 - 『夕子ちゃんの近道』
小野正嗣 - 『九年前の祈り』
綿矢りさ - 『蹴りたい背中』
鹿島田真希 - 『冥土めぐり』
絲山秋子 - 『薄情』
中村文則 - 『掏摸』、『教団Ⅹ』
青山七恵 - 『ひとり日和』
田中慎弥 - 『共喰い』
川上未映子 - 『乳と卵』、『ヘヴン』
村田沙耶香 - 『コンビニ人間』
西村賢太 - 『苦役列車』
円城塔 - 『道化師の蝶』
本谷有希子 - 『異類婚姻譚』
朝吹真理子 - 『きことわ』
小山田浩子 - 『穴』
今村夏子 - 『むらさきのスカートの女』
又吉直樹 - 『火花』
上田岳弘 - 『私の恋人』
高橋弘希 - 『送り火』


胸を張って言挙げしますね
多くの作家は知りません、せいぜい五人くらい
読んだのはたった二作品(ひとつは途中で放棄)
そして、知る限り彼等がミステリーで手を汚した例を知らない。
気取るんじゃないよ!
ドストエフスキーの代表作はすべからく殺人事件を扱う。

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