2015年8月22日土曜日

昭和人の「教養」主義





山川草木転荒涼
十里風生腥新戦場
征馬不前人不語
金州城外立夕陽


明治人のつくった漢詩なので、そう難しくはないが、今や知る人は・・・少ないだろうねえ
乃木希典の日露従軍中の作。
題名は・・正確には覚えていませんが「金州城外に立つ」とかなんとか。
この戦闘で、彼は子息勝典を戦死させている。

知る人は少ないと言いつつも、乃木の「名声」もあってか、
それなりに詩吟なんかで詠われるそうです。
いまでもそうですから、昭和前期では相当に浸透したんだろうとは思いますが・・・


昭和二年のこと「万人の必読すべき真に古典的価値ある書」を低価格で広く普及することを意図して
発刊されたのが岩波文庫。
これを読まずして昭和の教養人を語れない。
90年間でざっと5500千冊!(・・・だそうですが)
しかし、知る限り、倭人の漢詩集なんかの収録は極めて限定的。
古典系の文学全集でも漢詩の扱いは粗末なもんです。
せいぜい、懐風藻に、五山文学集程度なもので、
明治の軍人の手遊びごとなんか天下の岩波が扱うはずもない・・・



ダグラス・マッカーサーは、フィリピンとの縁が深い。
武運つたなく「アイシャルリターン」ってことでオーストラリアに逃亡した際にも
捲土重来を固く誓っていた。
SHALL・・・って言葉を使うところをみても、その執念は凄い!
山下奉文(最後のフィリピン防衛司令官)も本間雅晴(フィリピン攻略時司令官)も、
東京裁判に先立って、報復的に処刑されてしまったところを見てもそれはわかる。

あれで、死刑って(ロジックは指揮官責任)いうならば、
ベトナムや中近東でアメリカの将官は山と罪に問われています。
まあ、そんなことはどうでもいいのですが、
袖井先生の論文を読んでまして絶句したのが・・・

フィリピン防衛軍が殲滅され降伏した際に米軍により巻かれた宣伝ビラ。
現物を是非とも見てみたいが・・・・
かの乃木の漢詩が引用されていた(・・・らしい)
一般的な昭和の教養主義とは縁遠い。
学徒出陣した兵隊のバックパックのなかには必ず最初に刊行された岩波文庫の「萬葉集」って
言われたものだが・・・
戦争前から結構日本人研究をやっていたって言われていますので、
それなりの研究成果によるものなんでしょうが、
やっぱり、軍隊組織って「異様」なんですねえ。


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