2020年11月26日木曜日

民都対帝都

 


原武史さんの近代社会思想史に名を借りた「鉄道オタク」本。

岩波コンプレックスからアカデミックに成り上がりたいと渇望するなんとか社学術文庫の一冊ですが、まずまず面白い。

まず「帝都」は戦前によく使われたマスコミ用語。東京都と素直に書けばいいのに、重々しく大日本帝国の都だと言いたい夜郎自大さ。宮城(皇居)を中心にした円環状の都市計画も....なんかあざといし、碁盤の目状に四方がはっきりしている方が遥かにわかりやすい。江戸下りしてまごつくのはエスカレーターの立ち位置なんかはさしたる事ではなく、方角がわからなくなる事なんだわ。

他方で「民都」まずみかけないが、小林一三の造語だそうで「民衆の大都会」なるニュアンス。

公助でなく、自助あるいは民助の世界。今どきは信じ難いが民都の歴史的なインフラストラクチャーの多くは寄付を含めた民間資本の手になる.....

繁栄(経済的)から平和と幸せ...とはよく言ったもの。

政治的首都でなくとも、経済的首都であった時代は今よりも遥かに良かった。そもそも前島密が大久保利通に宛てた建白書なかりせば、大阪が首都だったはず。前島も大久保も斯様な江戸一極化を目指したわけではなかったが、公助にすり寄るさもしさがくにの形をおかしくしてしまった。


さりとて....からが関西私鉄発祥からの矜持の高さ未だに色濃く...昨今は希薄化しつつあるが、残っていると言うはなしが原先生の主張!

民都を鳥瞰的に眺めるに(カナののの字を思えば)

阪神

阪急

京阪

近鉄

南海      ....と個性ある私鉄が覇を争う。

まことに不便なんだがそれが当たり前でないと知ったのは江戸遊学時。

私鉄の旗艦駅は省線(今のJR)の隣接駅であっても乗換駅ではない。阪急梅田駅からJR大阪駅まではトボトボと雨晒しの歩道橋を歩かねばならない(津田沼駅と京成津田沼駅みたいなもの)駅名まで赤の他人風。三宮(神戸)もレイアウトはまた同じ。さすがに駅名は同じく「サンノミヤ」だが、私鉄は三宮。省線は三ノ宮。無論歴史的には三宮が正しい。

南海線の旗艦駅は難波駅(なんば駅と表記されるがインバウンド対応?)JR難波駅もあるが.....まず歩き移動する気にはならない。近鉄難波線と阪神なんば線の駅も「隣接」していますが、正式な名称は大阪難波駅(関西では珍しい相互乗入)メトロのホームの長さの三倍くらい歩けば辿り着けます。


過度に角突き合わせると利用者が不便になるだけなんですが、適当に手を握ったり足の蹴り合いをやったり....阪急と阪神は同じ持株会社の傘下ですが、未だに融通が効かない。

JRの交通系ICカードの私鉄利用では多少の制約がまだある。

競争するところと協調するところのさじ加減なんでしょう。アタシの下駄履きアパートは私鉄駅前なんですが、並走するJRが新駅設置。利用客囲い込みのため特急が停まるようになりました!

実に嬉しい。


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