2015年4月12日日曜日

赤煉瓦庁舎で思ったこと(中編)


元々はTVドラマであった。
映画化され・・・まあ、嘘っぽいのですが「アメリカの正義」を象徴する作品となった


十二人の怒れる男(シドニー・ルメット監督)

 
オスカー賞からは見放されたが、GG賞やベルリン映画祭では高く評価されました。
白人の男性しか登場しないって、いまならジェンダー論者から上映忌避の標的にされそうです。
その後、ロシア映画としてリメイク(2007年)
これまた男性陪審員ばかりです(ロシアってそんな国なんだ)
チェチェン紛争の影(被告は戦争孤児だったかな?)なんかを背景に今風ですが、全く面白くない。



これが倭国にくると・・・「十二人の優しい日本人」
三谷幸喜の舞台劇を中原俊が映画化。
91年の作品ですから、女性陪審員が三名登場します。
この映画で初めて豊川悦司を見ました(・・プロ映画鑑賞家の眼力ですなあ。光ってましたよ)
真面目風なんだけど、やる気がなくて付和雷同的で・・・でも心底では思いやりと良識がある倭人たち

これが筒井康隆さんだと、いささか邪念が入ります。
かれの戯曲ですが・・・「十二人の浮かれる男」(80年ころの作品です)

日本で最初の陪審員裁判
選ばれた十二人(全員が男性です)は、ウキウキしちゃって、どうみても無罪な被告人を
これじゃ面白くないからって むりやり有罪に仕立て上げる・・・
論理と理性をもって無罪を主張する陪審員には、過去のすね傷を持ちだして脅し上げる有り様(笑)



問題はここから・・・筒井さんは知ってか知らずか
日本で「最初の・・・」って部分がウソ!
裁判員制度ではなく「陪審員制度」がかつての日本にあったのです。
委細は法務省の赤レンガ庁舎に資料が展示されています。

戦前に20年間ばかり施行されていましたが、戦時下だとか評判がイマイチとかって理由で
廃止されました。
これがまあ・・・実に面白くって(笑)

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昭和十八年法律第八十八号(陪審法ノ停止ニ関スル法律)

陪審法ハ其ノ施行ヲ停止ス


   附 則


1 本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
2 本法ハ本法施行前陪審手続ニ依ル公判期日ノ定リタル事件ニ関シテハ之ヲ適用セズ
  本法施行前其ノ裁判ノ確定シタル事件ニ関スル陪審法第四章又ハ第五章ノ規定ノ適用ニ付亦同ジ
3 陪審法ハ今次ノ戦争終了後再施行スルモノトシ其ノ期日ハ各条ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム
4 前項ニ規定スルモノノ外陪審法ノ再施行ニ付必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

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第◯条って表記のない法律って初めて見ました。
たった本文12文字ですから日本で「一番短い法律」かもしれません。
国旗国歌法も、たった「2条」しかありませんが、句読点を除き18文字もあるのですよ。


ちょっと気になるのは附則3項です。
素直に読めば「戦争は終了」したはずですので、再施行しなければならないのですが、
そのためには「勅令」の公布が必要。
現在は「勅令」の制度がなくなりましたが、過去の勅令の改廃は政令で行われています。
制度がなくなったので「之ヲ定ム」ることができなくなったって理屈はない。


 
単に、内閣府あるいは法務省の任務懈怠なんでしょうか?
裁判員制度が始まる際(司法改革)に論議にならなかったのでしょうか?





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